「言葉」を軸にする
▲“言葉”で発想する遠山さん 「匠(タクミ)と仕組み(シクミ)」という言葉からは、プロの料理人のテクニックと、スタッフが簡単に調理できるオペレーションを両立させています。 |
例えば、「低投資・高感度」という言葉を日頃から考えているうちに、遠山さんは「スープ専門店」という新業態に到達しました。食事を楽しんでいるときに偶然思いついたのではなく、抱えていたテーマにリラックスした状況が好影響を与え、「1人スープを飲む女性」のイメージが浮かんできたのでしょう。
社名の「スマイルズ」も、そんな発想法から生まれた社名だとか。
私が会社を作ったのは、横文字でカッコいい社名のIT企業が全盛だった時期。それに比べ「スマイルズ」は、ずっこけた名前ですよね(笑)。でもこの社名にしたのは、「スマイルズ」という言葉から、“ふわっとした人格”をイメージできたからなんですよ。
『スープのある1日』
「女性が1人でスープを飲む」シーンに新業態のアイデアを得た遠山さんは、早速、企画書の作成に着手します。このときも以前『電子メールのある1日』を書いたように、スープが登場するさまざまなシーンを描いた『スープのある1日』という企画書にまとめています。(下記:『スープのある1日』より抜粋)<プロローグ> 恵比寿の日本センタッキー・ブライト・キッチンの秘書室に勤める田中は、最近駒沢通りに出来た(仮称)Soup Stock の具沢山スープと焼きたてパンが大のお気に入りで、午前中はどのメニューにしようかと気もそぞろだ。 (→具沢山スープと焼きたてパン) <店舗イメージ> 白と黒をベースにした、極めてシンプルな店舗は、さながら港区あたりの美容室かアパレルショップを連想させるが、メニューの内容が充実している自信の裏返しの様にも感じられて心地よい。ただの余計な装飾は、社会悪とさえ思えてくる。 (→低投資で高感度。シンプルな店舗) |
遠山さんは、次から次に湧き上がるイメージを、A4用紙で全13ページに渡る企画書にまとめてゆきます。
“擬人化”でイメージ共有
▲『秋野つゆ』さんに擬人化された店舗 |
『秋野つゆ』さんとは、装飾よりも機能を好み、フォアグラよりもレバ焼きを好む・・・という女性。彼女には“個性”があり、『秋野つゆ』さんが好む店が、『スープ ストック トーキョー』の店舗なのだそうです。
店舗を“擬人化”することによって、社員全員でイメージを共有できます。例えば店舗のインテリアを決めるときにも、「このドアノブは、秋野つゆさんだったら、こっちのシンプルなものを好む」などと、判断の基準になるというメリットがあるのです。
ところで遠山さんは、どうして『秋野つゆ』さんを思いついたのでしょうか?
37歳というのは、企画書を書いた当時の自分に近かったからだと思います(笑)。最近、ある人から「『秋野つゆ』さんは、遠山さんの奥さんのことではないですか?」と言われましたが、確かにそうかもしれません。きっと「自分好みの女性」だったのでしょう。
新規事業を認めさせたプレゼンテーション
▲企画書を読んだ直後の「ちょっといいかも」という感覚を大切にしかった |
当然、外食産業へ新規投資するような雰囲気ではありません。遠山さんはそんな逆風の中で、上層部に対しプレゼンテーションしたのです。ただでさえ、前例のない新規ビジネスに投資させるのは、とても難しいことなのですが・・・。
しかし、遠山さんはそのプレゼンテーションで、KFCJの当時の社長からゴーサインを得て、事業化の第一歩を踏み出しています。一体、どんなプレゼンを行ったのでしょう?