キャリアプラン/キャリアプラン事例

『Soup Stock Tokyo』 遠山正道社長(5ページ目)

アートとビジネスは両立できる! 話題のお店『スープ ストック トーキョー』の遠山正道社長は、注目の起業家であり、一流のアーティスト。アーティストとしての才能を、眠らせるのはもったいない。

執筆者:角田 正隆

語らないプレゼン

汐留店
スープ ストック トーキョー』の店舗
私のプレゼンを聞いてくれたのは、KFCJの社長と専務、そして三菱商事の外食ユニットリーダーだった新浪剛史さん(現ローソン社長)でした。

プレゼンの前に、企画書『スープのある1日』とビジュアルポスター、店舗イメージのCG写真といった資料を、出席者全員に事前に送付し、当日までに読んでいただくようお願いしました。

そして当日は、全体イメージと、生活者の視点からの「こんなのあったらいいね」、運営側からの「スープストックをやるメリット」といった点について、簡単におさらいしただけでした。

A4で13ページもある企画書を細かく説明していたら、説明が長くかかってしまい、冗長な印象を与えてしまいます。むしろ『スープのある1日』を読了してもらったときの「ちょっと面白いかも」という印象を“分解”させたくなかったのです。

その後、何件か質疑応答はありましたが、当時のKFCJの社長は「とりあえず事業化調査に進め」と、その場でゴーサインを出してくれたのです。

「紙」に語らせる力

大手コンビニなどで、缶スープも発売された<冬季限定>
プレゼンとなれば、どんな話で相手を引き込むか、必死に考えるものです。象徴的な例え話や、分かりやすい具体例を引用し、その場では話し手は聞き手を魅了するかもしれません。

とはいえ、億を超える投資をたった1回のプレゼンで承認してもらうのは、やや無理があるかもしれません。そうであれば、あえてプレゼンの場では語らす、考え抜いた「象徴的な例え話」や「分かりやすい具体例」などは、しっかり企画書に盛り込み、相手に何度も見直してもらうことによって、印象を何度も焼き付けた方が得策かもしれません。

イメージを固定化できる紙の力は、やはりあなどれません。あえて「口で語らず、紙に語らせる」プレゼンも作戦のうちではないでしょうか。

アナログ vs デジタル

 
最近、ロジカル・シンキング(論理的思考)が流行しています。企画書なども経済動向やマーケットの分析から入り、新規事業の必然性を訴えるといった“デジタル”なスタイルが主流になっています。

一方、遠山さんの発想法や企画書は極めて“アナログ”。「こうなったらいいな」というストーリーや、『秋野つゆ』さんのようなキャラクターに、企画への思いを込めています。

ケース・バイ・ケースで使い分けるべきでしょうが、デジタル思考の場合は「平凡な結論」に落ち着いてしまう傾向があるように思えます。ゼロから新しいものを生み出すとき、遠山さんの“アナログ”な企画術が、真価を発揮してくれそうです。


株式会社スマイルズ
代表取締役社長 遠山 正道氏 プロフィール

 
1962年東京生まれ。85年3月慶応義塾大学商学部卒業、同年4月三菱商事入社。建設部で天王洲地区の開発などを担当。その後、情報化推進室でIT導入の推進、情報産業部門でITソリューションを手掛ける。97年日本ケンタッキー・フライド・チキン出向。99年、お台場・ヴィーナスフォートに『スープ ストック トーキョー』第1号店をオープンさせる。2000年、三菱商事のコーポレートベンチャー制度で株式会社スマイルズ設立、代表取締役社長就任。ニューヨークで個展を開催するなど、絵画アーティストとしても活躍している。遠山氏の詳細キャリアは『「頼まれていない仕事」が面白い』参照。著書に『スープで、いきます』がある

関連リンク
・「頼まれていない仕事」が面白い
・遠山さんの作品が見れるページ
・遠山さんの個展について書いた記事
・美術評論家 伊東順二氏論文「失われたコンテンツを求めて」


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