中古住宅・中古一戸建て/中古住宅の購入術

中古住宅購入の注意点と失敗しない10のコツ!優良物件を見極めよう

中古一戸建て住宅の物件購入は、新築よりも安く、広く、希望のエリアで住まいを見つけやすくなるなど多くの魅力がある反面、失敗しないためには十分な注意が必要です。そこで中古住宅購入での注意点、「性能・安全」の視点から物件選びのチェックポイントをまとめました。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

中古一戸建て住宅の購入で失敗しないための注意点は?

中古住宅購入時の注意点

中古住宅を買うメリットは、実物を目で見て確かめられること。そして経年の変化も分かること。


中古住宅を購入する際には「エリア」「広さ」「価格」などをまずチェックすると思いますが、今回はパッと見では判断が難しい、住宅そのものの性能面のチェック項目をご紹介いたします。着目する10のポイントは以下のとおりです。

【目次】
1.耐震性
2.火災時の安全性、避難のしやすさ
3.耐久性
4.快適性
5.明るさ、開放感
6.シックハウス
7.静かな環境
8.バリアフリー性
9.防犯性
10.リフォームのしやすさ

それでは、順番に内容を見てまいりましょう。
 

中古住宅購入時の注意点1:耐震性

阪神淡路大震災や東日本大震災を経験し、住まいの耐震性を重視する人が増えました。中古戸建て住宅の耐震性を知る上で大切なチェックポイントは3つあります。「建設時期」「地盤」「メンテナンスの有無」です。 
 

建築時期でわかる中古住宅の耐震性

まずは建設時期ですが、「1981年」「2000年」という二つのチェックポイントがあります。もう皆さんも「新耐震基準」という言葉をご存じだと思いますが、1981年(昭和56年)6月1日以降に確認申請を取得し建てられた物件は新耐震基準で建てられており、一定以上の耐震性を持っていると考えられています。

もう一つ、2000年にも大きな耐震基準の改訂がありました。ここを境に木造戸建て住宅の耐震性がさらに向上しています。従って、中古戸建て購入では、最低でも1981年以降の物件、さらに2000年以降の物件ならなお安心だと考えてよいでしょう。ただし、それ以前に建てられた物件でも、耐震診断、耐震補強が済んでいれば安心です。もしくはそれらの改修を行うことを前提に、購入時にその費用を見込んでおくとよいでしょう。

■建築時期でわかる耐震性
新耐震でも倒壊の危険性、購入時には年代をチェック
戸建て住宅の耐震性は1981年と2000年が転換期 
新しい家ほど耐震性は高い?耐震基準の変遷 

 

軟弱地盤にある中古住宅には要注意

次に地盤のチェックポイントです。「軟弱地盤」「造成地の盛土部分」「液状化しやすい」に該当しないか確認してください。自治体によってはインターネットでハザードマップを公表しているところもあります。公開していない自治体であれば、建築課を訪れて直接聞いてみてもいいでしょう。

もしそれらの条件に当てはまる場合、どのような対策が取ってあるか、過去の地震時の被害状況などを調べましょう。自宅の購入は大きな買い物ですので、もし心配であれば許可を取って地盤調査をすることも検討してください。戸建て住宅なら簡易なスウェーデン式サウンディング試験でよいでしょう。

■地盤に関すること
関東の液状化マップ集 軟弱地盤、埋立地は要注意 
あなたの家は大丈夫?地盤調査のススメ
地震に弱い住宅を見分ける5つのキーワード

 

適切なメンテナンスがされている中古物件か

建物は建った日から劣化が始まり、古ければ古いほど様々な部分で耐震性にも影響が出てきますが、適切な時期に適切なメンテナンスをすることでそれらをカバーすることができます。メンテナンスの時期や内容を記した「家歴書」の有無や内容をチェックしましょう。

■建物のメンテナンス履歴
中古住宅の必需品「家歴書」を残そう
 

今すぐできる中古住宅の耐震性、目視確認のポイント

基礎部分にひび割れがないか、床下換気口が適切に設けてあるかなどを外から見て目視で確認してください。また、可能であれば家の中の床下や屋根裏をのぞいてみましょう。
基礎、土台などの状態を目視で確認しましょう。

基礎、土台などの状態を目視で確認しましょう。


耐震性に関する目視確認の場所例
・コンクリートの基礎部分に大きなヒビがないか(外からの目視)
・床下換気口はついているか(床下の適切な換気のため)(同上)
・家や基礎に傾きはないか(同上)
・柱、梁に変色はないか。痩せて細くなった部分、ささくれ立ちはないか(室内)
・床下の基礎と土台のつなぎ目がはずれていないか(床下)
・床下部分のシロアリの被害や、木が腐ったり欠けたりしていないか(床下)
・屋根を支える木材が腐っていないか(天井裏)
 

中古住宅購入時の注意点2:火災時の安全性、非難のしやすさ

消防車が寄り付けない狭い道路は万一火災が起きた時に消火活動が遅れる可能性があります

消防車が寄り付けない狭い道路は万一火災が起きた時に消火活動が遅れる可能性があります


火災が発生する一つの原因に「もらい火」があります。隣家との距離が離れていれば離れているほどもらい火が少なく、安全です。また緊急時に消防車や救急車が近くまで寄り付けるかどうか、道路状況も確認しましょう。古い木造住宅が密集していて細い道が入り組んでいる場所は、災害時の危険性が高くなります。

隣家との距離が近い地域に建つ中古戸建て住宅の購入を検討する時は、窓・外壁・軒裏など、もらい火を受けやすい部分に燃えにくい材料を使っているか確認してください。例えば窓は網入りガラス、軒裏は不燃ボード、外壁はタイルやモルタル、サイディングなどが該当します。
 

中古住宅購入時の注意点3:住まいの耐久性

床下換気口の前に物置や室外機など障害物が置かれていませんか?

床下換気口の前に物置や室外機など障害物が置かれていませんか?


住まいの耐久性は、目に見えない部分での配慮が影響します。例えば木造住宅では、柱、梁、土台など主要構造部の木材がよい状態を保てているかがチェックポイントになります。

風通しの確保のため、床下や屋根裏に換気口が適切にとってあるか、床下の土台のシロアリ対策や防腐処理が施してあるか、時間の経過とともに再処理をしているかなどをチェックしたいところです。前ページで触れた家歴書に記載があれば安心です。

また、パイプスペースの中にある給排水管やガス管は劣化が早い部分なので、室内の壁や床に点検・清掃・補修がしやすいよう点検口が設けてあるか目視確認を。また、それらの設備配管類がコンクリートに埋め込まれていないかなどを注意して見てみてください。

■見えない部分の耐久性
築10年、住まいの床下どうなっている? 
 

中古住宅購入時の注意点4:暮らしの快適性

建物の断熱性は、暮らしの快適性や住まい手の健康、夏冬の光熱費に大きな影響を与えます。少し前の木造住宅では無断熱のものや断熱が不十分な家もあり、注意が必要です。結露やカビの跡がないか室内をくまなくチェックしましょう。結露やカビが発生している中古木造住宅では、壁の中も腐っている可能性があります。

中古戸建て住宅を購入後、窓に内窓をつけて二重サッシにすると断熱性の向上が期待できます。もし窓まわりに結露の跡があるときは、断熱性の低い一枚ガラスの窓の可能性が高いです。窓まわりのリフォーム費用を見込んで購入計画を立てましょう。
 

中古住宅購入時の注意点5:住まいの明るさ

開口部(窓)の大きさや部屋の明るさは図面からはイメージしにくいものです。実際には隣家のある方角や距離、隣家の高さ、隣家の庭木などでも影響があります。
部屋の明るさ、空気の流れ、匂いなどは、五感で感じる部分です。中古住宅では実際の建物があるので事前に知ることができます

部屋の明るさ、空気の流れ、匂いなどは、五感で感じる部分です。中古住宅では実際の建物があるので事前に知ることができます


住まいが明るく開放感があると、精神的な安らぎを得ることができます。窓は大きくても太陽の光が入らなかったり、プライバシーの観点からカーテンを閉めっぱなしにしなくてはならないなど、マイナスポイントがないか確認してください。
 

中古住宅購入時の注意点6:シックハウスは大丈夫?

室内の化学物質が原因で、目がチカチカする、のどが痛い、めまいや吐き気、頭痛などの症状が現れることを「シックハウス症候群」と呼んでいます。主に合板フローリング、断熱材、接着剤などに含まれ、健康に害を及ぼすということで話題になりました。

中古住宅を購入する場合は、だいたい建築後5年が経過しているなら化学物質は抜けてなくなっていると考えられます。ただし、家具の新調時などに化学物質が発散される場合があるので注意してください。

■シックハウスとは
新しい家に住み始める前のシックハウス対策講座 
新築住宅、新品家具は要注意。シックハウス対策
 

中古住宅購入時の注意点7:静かな住環境

幹線道路やバス通りなど交通量の多い道路に家が面している場合、交通騒音がどの程度なのか確認しましょう。特に夜、安眠を妨害するような騒音がないか、隣家の人に聞いてみるのも一つの方法です。
夜の交通騒音がどの程度なのか確認しましょう。

夜の交通騒音がどの程度なのか確認しましょう。


もし交通騒音が懸念される場所にあるなら、窓に防音サッシや二重窓が使われているか確認しましょう。
 

中古住宅購入時の注意点8:バリアフリー

もしその中古住宅を終の棲家と考えて購入するなら、バリアフリーになっているか、あるいは将来リフォームで対応できる造りになっているかチェックします。以下に注意点を挙げます。

■トイレ
トイレは洋式で、将来の介護を視野に広めがよいでしょう。便器の前もしくは横に50センチ程度の余裕が欲しいところ。扉を開けたらそのスペースが確保できるようであれば、それでも可とします。

■寝室(1つ以上)
ベッドをおいて車イスを使うと想定すると、最低6畳程度は必要です。1階のトイレと浴室の近く、日当たりのよい場所にそのような個室があればよいでしょう。現在なくても将来リフォームで作ることができるかあたりをつけておきましょう。

■廊下
終の棲家と考えるなら、将来的に手すりをつける・杖をついて歩く・車イスが通る可能性を考えておきたいところです。廊下の有効幅員は、一本杖を片側にもって歩く場合75cm以上、自走式車イスの場合最低78cm以上が目安です。購入候補の中古戸建てが見つかったら、ぜひメジャーを持参して計ってみてください。車イス対応まで考慮すると、廊下も部屋の出入口もゆったりとしている物件がいいですね。
 

中古住宅購入時の注意点9:防犯性の高さ

放置自転車や落書き、ゴミの不法投棄などが多い地域は犯罪も多いと言われている

放置自転車や落書き、ゴミの不法投棄などが多い地域は犯罪も多いと言われている


泥棒に入られないためには、窓や玄関ドアの二重ロック、ピッキングに強いディンプルキーなど防犯設備が整っていることを重視しがちですが、それらは後付けすることも可能です。

中古住宅の購入時は、後からどうすることもできない道路と敷地の位置関係や、敷地周辺の様子などをチェックしましょう。周辺に自転車が放置してあったり落書きなどで荒らされたままの家があると、犯罪が起きやすい地域の可能性があり注意が必要です。

町内会で防犯意識が高い地域なら安心材料になります。購入前にご近所に町内会の取り組みなども聞いてみるとよいと思います。

■建物の防犯性
ドロボウに嫌われる家づくり
建物や設備で「防犯対策」を強化しよう
 

中古住宅購入時の注意点10:リフォームのしやすさ

中古住宅を購入する場合、将来的にリフォームする可能性があると思います。昔からある木造在来工法で建てられた住宅なら比較的リフォームがしやすいでしょう。壁で家を支える2×4工法の木造住宅だと壁を取り払ったり窓の位置を変えたりする大がかりなリフォームが難しいケースもあります。木造以外の独自の工法で建てる住宅メーカーの物件の場合、リフォームも同じ会社にしか頼めないなど、しばりがある可能性があります。

最もやっかいなのは違法建築物や、完成後の完了検査を受けていない家です。それらに該当すると、もし増築など大がかりなリフォームをしたいと思ったときにできない可能性があります。購入前に仲介業者に確認を取りましょう。
 

木造中古一戸建て住宅の購入は事前チェックが重要!

見ただけではわかりにくい住まいの性能や品質部分は、築後何年かが経った中古住宅ではなおさらわかりにくいものです。しかし、安心して住まい続けるためにも、購入前にご自身の目でしっかりチェックするようにしましょう。
床下がきれいな状態ならば一安心

床下がきれいな状態ならば一安心


中古物件の購入では、いくつか不具合を発見するかもしれません。その場合はリフォームでカバーできるかどうか判断しましょう。例えば先ほど述べた違法建築の物件だと大がかりな改築は難しいのですが、その他の物件であれば性能向上リフォームを施すことで、より安心・安全・快適な暮らしができるようになります。その分の費用を見込んでおくことを忘れずに。

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