長く住める価値、にどこよりも先駆けて取り組む
十年ほど前になるだろうか。新聞の一面に、20数年前に建てられた一戸建ての写真を大きく掲げ、その耐久性能を訴求するハウスメーカーの広告があった。“マイホームこそ夢”とばかりに綺麗なビジュアルで訴えかけることがPRの王道である住宅業界の広告において、「古い」「地味」といったある種タブーなクリエイティブが記憶に残っている方もいるだろう。
また同じころ、自社施工の中古住宅を専門とした独自の仲介情報サイト「ストックへーベル」を立ち上げ、ブランド価値を実証するための場を設けたことも印象的だった。
「超長期住宅」などという言葉がまだまだなかった頃に、長く暮らせる住まい作りに業界を先駆け、いち早く取り組んでいた。そんなイメージがとても強い会社のひとつが「旭化成工業(現旭化成、旭化成ホームズ)」である。
全住戸の形が異なる「ブラン・コリーヌアトラス荻窪3丁目」(平成8年7月竣工)は当時のデザインの先端を。注文住宅の実績からか、じつに様々なアイデアのマンションを世に送り出してきた |
マンション名称の変遷にも独自色が……
今では「アトラス(atlas)」系の名称に統一されているが、以前は等価交換(地主などとの共同)事業として取り組んだマンションシリーズは「ナビウス(navius)」と名づけられた。意味合いは「Navigate Us」。用地買収ありきではなく、土地の有効活用の一選択肢としてマンションの共同事業を提案する、あくまで「土地オーナーを主とした」事業運営が特色。現に等価交換モデル専用のマンションシリーズ名を設けたデベロッパーは他に記憶がない。
良いマンションが完成する背景には、その土地と地域への思い入れを掌握し、継承する気持ちが欠かせない。だからこそ、等価交換マンションの実績というものは、その企業姿勢の一端をあらわしているような気がしてならない。
旭化成ホームズは、その経験と実績をして今では都心の再開発事業を手掛るまで拡充した。長く住む価値をベースにし、その土地を理解した事業主と一緒に計画されたマンションはどう考えても魅力的ではないだろうか。
最初にナビウスシリーズとして分譲した「ナビウス二子玉川園」(平成9年3月) |
また、旭化成ホームズのマンションは今年のグッドデザイン賞でも話題になった。次ページへ。