建て替え事例のほとんどが、等価交換方式です
今までに建て替えができているのは100事例程度ですが、ほとんどが不動産会社による等価交換方式です。これは、居住者が所有している土地を出資して、その土地に不動産会社が建物を建設するというかたちで出資し、建物が完成した後に、居住者と不動産会社それぞれの出資比率に応じた割合で土地建物を取得する方式のことです。この方式は、マンションの所有者は今と同じ規模の住戸を取得し、不動産会社は増えた分の住戸を販売して利益を得ることができるという双方がwinwinの関係となることで、事業が成立するのです。逆に、増えた戸数の住戸が売りにくいエリアであったり、利益を得るための価格設定がしづらいエリアであったりすると、容積率はクリアしても事業性が低いということで、不動産会社が二の足を踏むこともあります。
高齢な所有者が多いマンションの建て替えは難しい
前述の環七以遠という立地は、住宅需要の面からみて、必ずしも等価交換事業が成立するには良い立地とは限りません。なお、前ページの建て替えパターンAよりBのほうが、当然ながら、建て替えは難航します。特に60代以上の高齢な所有者が多いマンションでは、難色を示す方が必ず現れます。自分の余命を考えると、500万円~1000万円の負担は重すぎるという経済上の理由や高齢であるため、今、生活することが精いっぱいで工事中の一時引越しや、新しいマンションでの新生活には対応できないという心身面での理由からです。こうした高齢者を無視しての建て替えは現実には難しいと思われます。
建て替えパターンCの場合は、理論上建て替えはできますが、2000万円程度の負担が必要なことから、Bと同様、高齢である所有者の反対や事業性が低いという面から等価交換をてがける事業者が手をあげないなどの理由などから、実現の可能性は高いとはいえません。
建て替えが可能かは、地域も影響してきます
港区などの都心部やターミナル駅近接の事務所化に有利な場所や容積率800%~900%の指定地区では再開発手法による共同建て替えの可能性は高いといえます。一方で、世田谷区、豊島区といった住居系市街地のエリアでは、建て替えは進みにくいと思われます。世田谷区では地域住民や自治体の姿勢も高層化を歓迎していませんので、建て替えは進まないことが想像できます。このように、地域による違いも影響してくるでしょう。
建て替えがほとんど不可能と思われる既存不適格マンション。次のページでは、既存不適格マンションが建て替え不可能な理由をお話しします。