マンションAとマンションBとは、どちらも昭和47年1月築。全く同じ時期に建ったマンションなんですが、建物外観ではご覧のとおり大きな違いが生まれています。 (マンションBは物件の特定を避けるため、残念ながら部分的にしかお見せできません。)
築31年を経過し、このような違いが生まれた原因は何だったのでしょうか? 当然、建築当時の建物グレードの差や施工レベルの差もあったことでしょうが (欠陥マンションが社会問題になった時期でもあります) 、何よりも大きな原因は 「大規模修繕の違い」 です。
マンションAでは、外観を見ただけでも定期的な修繕がきちんと行なわれているのが分かります (もちろん給排水管のメンテナンスなど、見えない部分は調べなければ分かりませんが・・・) 。そればかりか、共用の玄関に当初はなかったであろうオートロック設備も付加されていたり、清掃なども行き届いている様子。
これに対しマンションBでは、聞いたところ修繕積立金制度自体がなかったとのこと。詳細は分かりませんが、建築されてから31年間、大規模修繕はおそらく何も行なわれていなかったものと思われます。何らメンテナンスを行なわなければ、建物が劣化するのは当然のことです。
初めの分譲当時には建物もきれいで、修繕積立金の負担もないとして購入者は喜んだのかもしれません。しかし、定期的な大規模修繕 (外壁の場合10年程度ごと) は必要不可欠なもの。マンションを購入する場合、 「修繕積立金は絶対に必要な経費」 として考えなくてはなりません。
さすがにマンションBでも外壁の修繕を行なわなければならないとして、管理組合でその工事見積もりを取ったようですが、一戸あたりの負担が1千万円近くになったようです。マンション維持のために一度に1千万円を出すとなると至難の業。全戸の所有者が揃って負担することも考えにくい (実際もう住んでいない人も多い) のですが、その後どのような結論になったのでしょうか? 結果は聞いておりません。
築30年を超えると建替えの話も出てくる頃ですが、区分所有者の合意を得るのが難しく、実際に建替えを行なうのは難しいものです。最近ではマンション建替えに関する法整備なども進められていますが、依然として難しいことに変わりはありません。
■ マンション周辺相場に及ぼす影響
マンションBのような物件では、売買するのにも当然に安い価格でしか取引できません。ここでひとつ問題が生じます。このような物件がエリアにひとつであれば大した影響はありませんが、複数あった場合にはエリア全体の相場を下げる働きをするケースが考えられます。
エリア (最寄駅) ごとの中古物件相場は、売りに出された物件の価格、大きさ (専有面積) 、築年数、駅からの所要時間などの表面的な情報を集計したものとなります。個々の建物の状態による補正はなかなか行なわれないもの。つまり安い売買データがいくつも揃ってしまうと、そのエリア全体の平均価格が下がってしまうわけです。これがひとつ、ふたつ程度であれば集計データからはじかれるものと思われますが・・・。
■ 中古マンションを買うときには・・・
管理費・修繕積立金のチェックが欠かせません。管理費については別の機会に説明したいと思いますが、修繕積立金は平均して月額1万円前後のことが多くなっています (築年数、部屋の広さにより異なります) 。ただし、新築時から5、6年くらいまでは月額5千円前後に設定している場合も多いようです。
マンションBのように修繕積立金がないマンションはそれほどありませんが、ある程度築年数が経っていても月額2~3千円くらいの物件はよく見かけます。定期的な大規模修繕などを考えれば心もとない金額ですね。買う者の心理としては、住宅ローンの返済と合わせ、毎月の負担はできる限り抑えたいところですが、大規模修繕ができないことによる資産価値の目減りを考えると、決して “余分な経費” ではないはずです。
ちなみにマンションBでは、分譲当時から月額1万円の修繕積立金があったと仮定すれば、31年間の負担額は372万円。実際にはそれがなかったために、 (推定で) 1,000万円以上の大幅な評価減になっています。
修繕積立金については重要事項説明の際、その月額と合わせマンション全体で既に積み立てられている額も説明されます。大規模修繕の計画内容とともに、それに見合った十分な額が積み立てられているかも慎重にチェックしたいところです。 (無駄な使われ方がしていないかチェックするのは、残念ながら入居後のことになりますね。)
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