不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

マンションをプレゼントされたら? 贈与税などの問題

もし、ある日突然マンションをプレゼントされたら、あなただったらどうしますか? 贈与税や不動産取得税、登記費用(登録免許税など)のことも考えなければなりません。単純にはいかないのが不動産の世界です。受け取る前によく考えましょう!

執筆者:平野 雅之

マンションをプレゼントされたらどうする?

マンションをプレゼントされても困ることがある!?

マンションをプレゼントされても困ることがある!?


「クリスマスにマンションをプレゼントしよう」「キミの誕生日にマンションをあげよう」
そういわれたとき、あなたならどうしますか?

指輪や時計だったら「わぁ、ありがとう」で済むのかもしれませんが、マンションの場合にはそれほど単純ではありません。

もらえるものはもらったほうが嬉しいでしょうが、ここは賢く事前にチェックしましょう。贈与税不動産取得税登記費用(登録免許税など)のことも考えなければなりません。

即座に「ヤッター、ありがとう!」って答えてよいのも相手次第でしょう。「どうするか考えるからちょっと待って!」と答えたほうがよいケースのほうが多そうです。

バブルの頃じゃあるまいし「そんなことあるワケないわ!」という人が多いかもしれませんが、いつ奇跡が起きるかわかりません。そのときに備えて知っておいても損はないでしょう。

なお、一戸建て住宅をプレゼントされた場合でも基本的な考え方は同じです。  

マンションのプレゼント……贈与税の基本的な考え方

「マンションをプレゼント」といっても、購入費用を “金銭で” プレゼントされる場合と、すでに所有しているマンションをプレゼントされる場合があるでしょう。そのどちらかによって贈与税が大きく異なってきます。

金銭をプレゼントされた場合には、その金額に対して贈与税が計算されます。1年間の基礎控除額は110万円ですが、それ以外にも夫婦間や父母・祖父母からの贈与であれば特別控除などもあります。

しかし、第三者からのプレゼント(贈与)に対しては基礎控除しか使うことができません。

すでに所有しているマンションをプレゼントされた場合は、原則として建物部分については固定資産税評価額、土地持分については路線価をもとにして課税評価額を求めます。

物件の条件によってかなり異なりますが、現物なら相場価格の50~70%程度で評価できるケースが多いでしょう。なお、基礎控除については現金の場合と同じです。

たとえば、売買価格が3,000万円(諸費用込み)のマンションの購入費用を全額現金でプレゼントされたとき、3,000万円-110万円(基礎控除額)=2,890万円に対して贈与税が課税されるのに対し、同等のマンションを現物でプレゼントされれば1,500万円程度(物件によりかなり差があります)に対する課税で済むこともあるわけです。

そこで、いったんマンションを買って贈る人の名義にしてから相手にプレゼント(名義変更)すれば税金を安くできるのかといえば、それほど単純なものではありません。購入してすぐの贈与の場合、税務署では実質的に金銭の贈与と変わらないものとみなして課税します。

それでは、どれくらいの期間をおけば大丈夫かというと、どうも明確な基準はないようで、少なくとも翌年、税務署とのトラブルをはっきり避けるためには数年間おいてから名義変更したほうがよさそうです。

贈与税について勘違いしてはいけないことは、「贈った人」ではなく「贈られた人」が支払う税金だということです。つまり、プレゼントされたあなたが支払わなくてはなりません。

仮に2,000万円の贈与なら税率は50%であり、その負担はかなり大きなものとなるでしょう。また、1年間に基礎控除額(110万円)を超える贈与を受けた場合には、翌年2月1日~3月15日の間に確定申告をすることが必要です。

なお、「贈られた時期」は金銭であればそれを受け取ったとき、現物であれば原則として所有権の移転登記をしたときとなります。
 

諸費用の基本的な考え方

マンションを現物でプレゼントされた場合でも、贈与税以外に不動産取得税や、登録免許税・司法書士報酬などの登記費用がかかります。購入資金をプレゼントされた場合は通常の住宅売買と同じですから、さらに媒介手数料や契約書の印紙税など諸費用も考えなければなりません。

特例の適用によって贈与税がゼロとなる場合であっても、贈与税以外の税金や諸費用に関しては基本的に軽減がありません。

また、プレゼントされたマンションであっても購入したのと同じく毎年、固定資産税都市計画税がかかりますし、管理費修繕積立金なども毎月支払わなくてはなりませんから、もらいっぱなしで一切負担なし、というわけにはいかないのです。
 

配偶者からプレゼントされたら

婚姻期間(婚姻届からの満日数)が20年を超える配偶者からのプレゼントであれば、2,000万円までの配偶者控除が認められます。この場合、夫から妻へのプレゼントだけでなく、妻から夫へのプレゼントでも同じことです。

マンション購入資金としての金銭のプレゼントであれば、配偶者控除の2,000万円と基礎控除の110万円を合わせて、2,110万円までが無税となり、それを超えた分について贈与税が課税されることになります。

すでに所有しているマンションなら、(物件により異なりますが)売買相場でおおよそ3,000万円程度のマンションを無税でプレゼントすることも可能でしょう。この場合、2,110万円分の贈与税の評価となるように調整して、共有持分をプレゼントしてもかまいません。

ただし、現物をプレゼントされた場合には翌年3月15日までにそのマンションに居住し、引き続き居住する見込みであることが必要です。金銭のプレゼントの場合も同様に翌年3月15日までに購入したうえで居住を開始しなければなりません。

そのため、すでに住んでいるマンションの持分のプレゼントなら何ら問題はないでしょう。

ただし、配偶者控除の適用を受けられるのは1回だけです。贈与税の評価額で1,000万円程度のマンションをプレゼントされて配偶者控除を使ってしまうと、残った控除枠を別の機会に使うことができないので注意が必要です。

控除枠いっぱいのプレゼントなら「ありがとう!」でよいのですが、控除枠よりだいぶ少ないプレゼントなら「ちょっと待った~!!」のほうがよいのかもしれません。

なお、婚姻期間20年未満の夫婦間においてはこのような特例がありません。
 

両親や祖父母からプレゼントされたら

直系の父母または祖父母からプレゼントされたときには、相続時精算課税制度や住宅取得資金贈与の特例などを活用することができますが、相続時精算課税制度は現金贈与と金銭贈与のどちらにも使えるのに対し、住宅取得等資金の贈与は原則として現金のみとなります。

ただし、その適用要件は毎年の税制改正で変わる場合もあるため、実際に贈与を受ける年の内容をあらかじめしっかりと確認しておくことが欠かせません。

また、相続時精算課税制度は「相続財産の先取りとそれに対する課税の先送り」といった意味合いのものであり、使ったほうが得になるかどうかはケースバイケースです。

しかし、プレゼントされた資金を使って住宅ローンを組まずにマンションを購入できれば、住宅ローンの金利を払わずに済むメリットは大きいため、それを含めたうえで検討しましょう。
 

婚約者からプレゼントされたら

婚姻期間20年未満の夫婦でも特例はないのですから、婚約者からの贈与に対する特例は何もありません。税金や諸費用をどうするのかきちんと話し合いましょう。

共有名義を提案されたときには、婚約破棄の可能性がないかもじっくり考えたほうがよさそうです。別れるとき面倒なことになりかねません。
 

不倫相手からプレゼントされたら

贈与税と不動産取得税と登記費用をしっかりと計算して、その分も現金でもらいましょう!
 

見知らぬ人からプレゼントされたら

即座に断るのが賢明です。それってほとんどストーカーでしょう。金持ちのストーカーってあまり聞きませんが……。

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