不動産売買の法律・制度/不動産売買の手続き

重要事項説明書のポイント(不動産の表示・登記記録)

不動産の売買契約締結前に宅地建物取引士から重要事項説明を受けますが、まったく予備知識がないと何を説明されているのかよく分からない部分もあるでしょう。そこで5回に分けて、重要事項説明書のポイントを解説します。まず、不動産の表示や登記記録などについてみていくことにしましょう。(2017年改訂版、初出:2004年7月)

執筆者:平野 雅之

【ガイドの不動産売買基礎講座 No.105】

不動産の売買契約に先立ち、宅地建物取引士から物件についての重要事項説明がされることをご存知のかたも多いでしょう。そのとき何に注意しながら説明を受けるべきなのか、これから5回に分けて「重要事項説明書」に関する主なポイントを説明していくことにします。

でもその前に……。


契約トラブルの背景は?

不動産売買をめぐる何らかのトラブルに巻き込まれた人の話を聞くと、「重要事項の説明を受けた記憶がない」と答えるケースが実に多いのだそうです。ところがいざ調べてみると、契約当時の重要事項説明書に「説明を受けました」というサインが残されていることが大半です。

つまり、重要事項説明を受けなかったために記憶がないのではなく、説明を受けたにもかかわらず、そのこと自体を忘れてしまっているケースがほとんどでしょう。トラブルにはなっていない場合でも、重要事項説明のことはすっかり忘れている人が多いのかもしれません。

その原因として、売買契約締結前に慌しく重要事項説明をしてしまおうとする不動産業者の責任も当然ながらあるでしょうが、慣れない行為に対して極度に緊張してしまった買主自身に起因する面もあるのではないでしょうか。

不動産業者の本音では、買主の気が変わらないうちに、重要事項説明から売買契約締結まで一気に段取りを進めたいところです。しかし、買主としては可能なかぎり事前に重要事項説明書や関連書類を入手して、ある程度の “予習” をしてから実際の説明を受けたいものです。

あらかじめ説明内容の概略を理解しておくことにより、実際に説明を受けるときの緊張を少しでも和らげることができるでしょう。

その一方で、説明をする宅地建物取引士も、ただ重要事項説明書に書かれた内容を読み上げるだけの人から、一つひとつの項目を買主が分かりやすい言葉に置き換えながら丁寧に説明する人まで実にさまざまです。

説明をする宅地建物取引士自身がその物件の調査を実施し、物件の状況を把握し、さらに重要事項説明書の作成までしていれば、書類をじっと見たままではなく、買主が内容を理解できているかどうか様子を見ながら説明を進めていけるはずです。

しかし、残念ながらそうでない宅地建物取引士が多いのも事実であり、説明をする宅地建物取引士が、対象物件そのものを見てすらいないケースもあるので注意しなければなりません。

宅地建物取引士がただ書類を棒読みするだけであれば、取引士自身が説明に慣れていない初心者か、あるいは対象物件をまったく把握していないものと判断して差し支えないでしょう。


それでは、重要事項説明書の各項目ごとにポイントや注意事項をみていくことにしましょう。


売買対象の不動産の表示

売買対象不動産を特定するために必要な項目が記載されます。

所在、地番地目家屋番号など不動産特有の表示項目が出てくるため、何ら予備知識がないままに説明を受けるとチンプンカンプンになってしまうかもしれません。公図や測量図などの図面と照らし合わせながら、納得できるまで説明を受けるようにしましょう。

地番はそれぞれの土地に対して付けられた固有の番号で、住居表示が実施されている区域における住所の表示とは異なります。

また、「不動産の表示」は基本的に「登記記録」の表題部に記載された内容が中心ですが、これらが現況と異なる場合には、その相違事項についてもきちんと確認することが大切です。

初めて接すると分かりづらいのは、土地区画整理事業地内における「仮換地」の場合でしょう。売買対象不動産として表示される土地(従前の土地)と、実際に使用できる土地が異なりますから、しっかり理解できるまで十分な説明を受けてください。


売主の表示

売主の住所や氏名などが説明されますが、不動産の売主は必ずしも登記記録に記録された所有者とはかぎりません。登記記録上の所有者と売主が異なる場合には、売主の権原(権利の内容や原因)について、それを証明する書類の確認が大切です。


第三者の占有

売買契約の締結時点において、売買対象の建物を第三者が占有しているケースもありますが、それが正当な権原(賃貸借契約など)によるものなのかどうかを書面で確認するとともに、明け渡しの有無やその段取りなどについてもしっかりと説明を受けてください。


登記記録に記録された事項

ここでは文字どおり、登記記録の内容がそのまま転記されています。あらかじめ印刷された既製の書式でも比較的大きめの記入欄を設けているのことが多いものの、ここへ単に「登記事項証明書参照」とだけ記入して済ませてしまう不動産業者や宅地建物取引士が多いのは残念です。

記入を省略することによって、不動産業者自身が問題点を見落としたり、説明の際にも不十分な内容で終わったりする原因となりがちです。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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