一戸建て住宅や土地を購入するときに、気になるのは前面の道路でしょう。今回は私道に接する敷地を検討しているユーザーからご質問をいただきました。
(東京都国分寺市 大原さん 40代 女性)
通行をめぐるトラブルなどのリスクも一様ではなく、個別に判断しなければならない部分も多いのが実情でしょう。
このような私道を公道化するのは、ほとんど不可能!
この場合、再開発や都市計画道路(新設・拡張)による土地の買収などとは異なり、その私道を区市町村へ寄付することが前提で、このような私道の公道化のことを「私道の移管」ともいいます。
私道とはいえ立派な財産であり、「寄付をする」といえばどこの自治体でもすぐに受け付けるように感じる人もいるでしょう。ところが、問題はそれほど簡単ではありません。
公道として取り扱うことになれば、その舗装や維持管理などの費用を自治体が負担しなければならず、予算のなかから公費(税金)を投入するわけですから、それに見合う道路でなければ「寄付を受け付けない」というのが原則です。
具体的な受け付けの基準はそれぞれの自治体によって異なりますが、おおよそどの自治体でも共通しているのが「一般の通行に利用されていること」という要件です。その表現はそれぞれ違うものの、要するにその道路の「公共性」を重視しているわけです。
つまり、特定の限られた人だけが利用する私道ではなく、その両端がどちらも公道に接していて通り抜けることができ、一般の人や車の通行が可能であること、特別な利害関係を有する人がいないことなどが条件となっています。
また、幅員が4m以上であること、道路への突出物がないこと、側溝など排水設備があること、行き止まり道路であれば基準に合う自動車の転回広場があること、既存の公道と接する部分に隅切りを設ける(カドを三角状にする)ことなどを条件にしている自治体もあります。
そのほか、これはどの自治体でもほぼ共通するでしょうが、寄付しようとする私道の土地に対し所有権以外の権利(抵当権など)が設定されていないこと、関係者全員の同意・協力が得られること、敷地部分と私道部分との境界が確定できることなどが前提条件となります。
相続した敷地や私道部分に対する相続登記をしていない例も多いのですが、寄付しようとする私道の中にこのような土地が含まれ、登記を適切に直すことが困難な場合には、原則として寄付を受け付けることはないでしょう。
なお、敷地部分と私道部分が一つの土地として登記されている場合には、これを分筆(抵当権などが設定されていればこのときに抹消)したうえで寄付をすることになります。
そのとき、分筆登記などの費用は個人負担、寄付による所有権移転登記費用は自治体負担としているケースが多いようですが、どちらも自治体負担としている場合もあります。
いずれにしても、関係住民に私道寄付の意向があるからといって、すんなりと公道にできるとは限りません。
そればかりか私自身がかつて経験した事例では、私道の寄付・公道化の要件はすべて整っているにもかかわらず、それを受ける自治体の税収不足により「公道管理の予算をこれ以上増やせないので、新規の寄付(私道移管)を受け付けません」といわれて断念したケースもありました。
お尋ねのケースでもしばらく様子をみて、話し合いの推移や自治体の対応などを見極めてからでなければ、何とも判断できないでしょう。
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