不動産にとって「道路」はたいへん重要な要素でありながら、なかなか難しい問題をかかえているため、一般の人には分かりづらい部分も多いでしょう。
前回の記事で、建築基準法上の道路に接していない敷地での建築確認について説明したところ、さらにこのようなご質問もいただきました。
(茨城県取手市 みち子さん 30代 女性)
ひとくちに「道路」といっても、その意味する内容はさまざま
なお、道路に関する規定について詳しくは ≪道路の種類と接道義務を正しく理解しよう≫ をご参照ください。
「道路」について理解を深めるためには、まず、以下に挙げるものが「すべて別物である」ということを意識しておくとよいでしょう。
1.日常生活で使われる言葉としての「道路」
2.建築基準法で定義された「道路」
3.道路法で定義された「道路」
4.道路交通法で定義された「道路」
5.道路運送法で定義された「道路」
6.その他の法律や条令などで定義された「道路」
7.不動産登記法で定義された、地目としての「公衆用道路」
8.道路の所有・管理関係をあらわす「公道」と「私道」
これらのうち「道路法による道路」が「建築基準法による道路」の定義のなかの一つであるとともに、そのほとんどが「公道」であることを除き、それ以外は(類似性は高いものの)いずれも異なる概念によるものです。
ただし、「道路法による道路」であっても、自動車専用道路など一部は建築基準法の対象から除かれます。
不動産関連の本やwebサイトの解説を読むときには、「道路」といえば建築基準法による道路のことを指している場合が大半でしょう。しかし、それ以外のときには「道路」が何を意味しているのかを、よく区別して考えなければなりません。
ご質問では「公衆用道路なのに公道ではない」ということが気になっているようですが、登記された地目の「公衆用道路」とは、あくまでも土地利用形態による登記上の分類に過ぎず、所有関係をあらわす「公道」とはまったく異なります。
したがって、もちろん「公道である公衆用道路」もありますし、「私道である公衆用道路」も同様に存在するわけです。また、地目が公衆用道路であることと、建築基準法上の道路であるかどうかといったことも直接の関係はありません。
建物を建てるときに問題となるのは「公道か私道か」ではなく、建築基準法に定められた道路かどうかということ
ちなみに「建築基準法による道路ではない道路」については、それらを区別するために「通路」という用語を使うケースも多くなっています。
このような「道路」など用語の違いを、文章を書く側も、そしてそれを読む側も理解していないと、間違いや誤解を生じやすいので十分な注意が必要でしょう。
次にいくつか挙げるのは、不動産について書かれた市販の書籍や他のwebサイトで、私が実際に発見した道路に関する間違い記述や、紛らわしい説明の一部です。あいまいな書き方がされたものも多いので、十分に注意しなければなりません。
「建物の敷地が公道に接していないときには建築確認を取得できない」(間違った説明)
前面が私道でも建築基準法上の道路であれば建築確認を受けることができます。ここでは、建築基準法による道路が公道、それ以外が私道というような誤った説明もされていました。
「位置指定道路とは、いわゆる私道のことである」(あいまいな説明)
たしかに位置指定道路(建築基準法による道路の一つ)は私道ですが、私道のすべてではありません。築造後に公道へ移管された位置指定道路もありますし……。
「幅員4m未満の道路はすべて私道である」(間違った説明)
建築基準法42条2項による道路について書かれた部分でしたが、4mに満たない公道も存在し、幅員によって分けられているわけではありません。
「公道とは、国道、都道府県道、市町村道などのほか、都市計画法・土地区画整理法その他により築造した道路、建築基準法が施行されたときに現存する道路などのことである」(あいまいな説明)
国道、都道府県道、市町村道までは公道で間違いありませんが、その後に記載されている道路には公道も私道も存在するため、「公道」の説明として不適切でしょう。
どうも「公道」や「私道」という言葉が絡むと勘違いが多くなっているようです。
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