抵当権が登記された物件は一般的です。もし、抵当権を残したままで売買をすれば、大変なトラブルに発展する危険性もありますが……。



question
中古住宅を購入しようと考えて物件を探しているところですが、親戚の者から「抵当権が設定された物件は自分の権利を失うことがあるから気をつけるように」と言われました。どのような点に気をつければよいのでしょうか?
(山梨県 匿名 20代 女性)



answer
金融機関から住宅ローンなどを借りて不動産を購入すると、その担保として物件の登記記録(土地・建物)には抵当権が設定されます。

売主が借りた住宅ローンなどに対する抵当権は、中古住宅の売買契約を締結する時点において、とくに大都市圏では設定されたままになっていることのほうが普通です。

この抵当権の設定を、残代金の支払い(引き渡し)後も抹消しないままで残しておくことは、条件が揃いさえすれば可能です。

しかし、売主の借入金に対する抵当権をそのままにして売買をした場合、以前の所有者である売主の借入金返済が滞れば、抵当権の実行により競売にかけられるなどして、新しい所有者である買主が所有権を失ってしまうことにもなりかねないでしょう。

契約交渉のイラスト

原則どおりの段取りで売買契約がされれば、抵当権付の物件でも心配はないが……

おそらく親戚の方はこのようなケースを想定して「気をつけるように」と言われたのだと推察しますが、現実の問題として通常の売買契約における段取りを考えたとき、売主の借入金に対する抵当権設定の有無を心配する必要は、それほどありません。

なぜなら、当事者同士の合意のうえで “意図的に” 従前の抵当権を残すような場合は別として、不動産の売買取引においては売主の借入金に対する抵当権を抹消したうえで物件を引き渡すことが大前提だからです。

地方都市などでは、もともとの借入額が少なく、返済期間も短いことが多いため「抵当権は引き渡し前に抹消しておくのが原則」と解説している自治体・公的機関などもありますが、大都市圏ではなかなかそうもいきません。


抵当権の抹消手続きは決済に合わせてすることが多い

売買取引の決済時において、買主が支払った残代金によって売主の借入金残額を一括で返済し、所有権移転登記の申請と抵当権抹消登記の申請、それに買主が借りた住宅ローンに対する新たな抵当権設定登記の申請を同時にすることが通例となっています。

この場合、売主の借入金残額よりも売買代金のほうが多ければ、抵当権を抹消することに何ら問題はないのですが、売買代金だけでは返済しきれないようなときには、抵当権者(=金融機関など)が抵当権の抹消に応じるのかどうかについて、事前に綿密な確認をすることが必要です。

ちなみに、抵当権として登記されている金額は当初の借入金額であり、登記事項証明書などを見ただけでは実際の残高を知ることはできません。

宅地建物取引業者が売買契約の媒介をする際には、事前に抵当権の抹消の可否を抵当権者に確認し、抵当権が抹消できない物件については売買契約自体をとりやめることもあります。

また、売買契約を締結してからでないと抵当権の抹消の可否が確定しない場合には、「抵当権を抹消できなければ白紙解除とする」という旨の特約を入れることもあるでしょう。

そのほかにもいくつかの手法がありますが、いずれにしても買主に不測の損害を生じさせることがないように、正常な宅地建物取引業者であるかぎりは万全の方策を講じるはずです。


それでもやっぱり注意は必要!

もし、宅地建物取引業者がきちんとした業務をしなければ、売買契約にリスクを伴うことにもなるでしょう。

しかし、その場合でも通常の段取りであれば、決済時において司法書士が抵当権の抹消に必要な書類をチェックし、問題がまったくないことを確認したうえでなければ、金融機関は買主に対して新たな住宅ローンの融資をしません。いわば二重三重の安全策がとられているのです。

契約交渉のイラスト

個人同士で売買契約をする場合には十分な注意を!

したがって、最も注意が必要なケースは、宅地建物取引業者を介さずに個人同士で売買取引をし、登記申請も司法書士に依頼せず自分たちで行ない、さらに買主は金融機関から住宅ローンを借りずに現金で一括して支払うような場合です。

もちろん、宅地建物取引業者の媒介による売買取引であっても、その業者が信頼できる相手かどうかについて十分な注意を払うことは欠かせません。


宅地建物取引業者の対応に注意が必要なとき

売買契約前の宅地建物取引士による重要事項説明では、登記されている事項の詳細についても説明されるはずです。

そのとき、売買金額に対して抵当権設定の金額が大き過ぎるような場合には、まず「どのような段取りでその抹消をするのか」あるいは「抹消ができない場合にはどうするのか」ということについて、納得ができるまで説明を受けてください。

また、重要事項説明書の添付書類として登記事項証明書を渡されるはずですが、その日付にも注意しましょう。

それが何か月も前のものであれば宅地建物取引業者の業務姿勢に問題があるでしょうし、万一それが数年前のものだったとしたら論外であり、手付金を支払うべきではありません。

最近では登記内容をオンラインで確認できるようになっており、それをプリントアウトしたもので済ませようとする宅地建物取引業者が、ひょっとしたらあるかもしれません。

しかし、そのプリントには日付の記載も法務局の印もなく、当然ながら登記内容についての証明力もないため、そのような業者にも注意が必要です。

なお、ここでは抵当権についてのみ説明しましたが、買主の権利行使を阻害する恐れのある抵当権以外の権利についても基本的な考えかたは同じです。

ただし、住宅ローン以外の借入金にかかる抵当権や根抵当権がいくつも設定されていたり、所有権や抵当権以外の仮登記や予告登記をはじめ複雑な登記がみられたりする場合には、最悪のケースで考えると、売主が破綻寸前のこともあり得ます。

このようなとき、特約による白紙解除で手付金を返還する可能性があるうちに、売主が行方知れずになる事件も決して考えられないことではありません。万一の事態を防止するための対策を、宅地建物取引業者がどう講じているのか、慎重に確認すべきケースもあるでしょう。

ただし、最近ではあまりみられなくなっていますが、以前には抵当権設定の登記とセットにして「所有権移転請求権仮登記」などをする例も少なからずありました。

抵当権の権利者と同じ金融機関などによる(同一原因に基づく)「所有権移転請求権仮登記」などは、抵当権抹消の手続きと同時に抹消できますので、あまり心配はいりません。

さらに、ここでは説明を省略しますが、「差押」の登記がある場合、および「譲渡担保」による所有権移転の登記がある場合などには、通常の売買契約のときとは異なる段取りによって取引が進められます。

売買契約締結へと進む前によく説明を受け、不明な点があれば必要に応じて専門家である第三者のアドバイスを受けるようにしてください。


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