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贈与税の配偶者控除を理解しておこう

住宅に関する贈与の特例のひとつである「贈与税の配偶者控除」について、よく理解しておくようにしましょう。特例の要件を満たす夫婦であれば、ぜひ検討、活用してみたいものです。(2017年改訂版、初出:2005年9月)

執筆者:平野 雅之


父母(または祖父母)からの住宅取得資金の贈与に関する特例は比較的よく利用されていて、その内容をご存知の方も多いでしょう。しかし、住宅に関する贈与の特例はそれだけでなく、夫婦間の贈与についてもたいへん有利な規定が設けられています。

要件に該当する夫婦であればぜひ活用したい「贈与税の配偶者控除」について、しっかりと理解しておくようにしましょう。


贈与税の配偶者控除における非課税枠は2,000万円

ベンチに座る老夫婦

贈与税の配偶者控除の特例は、長年連れ添った夫婦の特権!?

贈与税
の配偶者控除では、夫から妻(または妻から夫)への贈与に対する非課税枠が2,000万円となっています。

この非課税枠は、通常の贈与における年間の基礎控除額である110万円の枠も同時に適用できますので、この特例を使う年には合計で2,110万円までを非課税とすることができます。

なお、贈与額が2,110万円を超える場合には、超えた部分に対して通常の贈与税が課税されることになります。


婚姻期間が20年以上であること

贈与税の配偶者控除を適用するための条件として、まず「婚姻期間が(入籍後)満20年以上」であることが前提です。これから結婚する夫婦であれば、入籍してからあと20年待たなければなりません。20年後にこの制度があるかどうか分かりませんが……。

再婚の場合であっても期間の短縮などはなく、事実上は婚姻状態だったとしても未入籍期間は算入されません。

また、贈与税の配偶者控除は「同じ配偶者に対して一生に一度」しか使えません。仮に2,000万円の非課税枠のうち500万円分しか適用しなかったとしても、残り1,500万円の非課税枠は二度と使えないことになります。


贈与財産の種類と居住期限の要件

贈与税の配偶者控除を適用する場合の贈与財産は、居住用不動産(土地・建物)の現物、もしくは居住用不動産を取得(購入・建築)するための金銭に限られています。

したがって、賃貸用の不動産を贈与したり、贈与された金銭を他の目的で使ってしまったりした場合には、贈与税の配偶者控除を適用することができません。

居住用不動産の現物で贈与する場合には、日本国内にあるもの(敷地の権利が借地権の場合も含む)に限られるほか、店舗兼用住宅などの場合にはその居住用部分のみが対象となります。ただし、居住用部分が概ね90%以上であれば「すべてが居住用」とみなされます。

また、居住用家屋の敷地のみの贈与も対象となりますが、そのときは家屋を本人または配偶者、あるいは同居する親族が所有していることが要件です。

なお、贈与税の配偶者控除において、取得する居住用不動産の建物面積や築年数などに関する要件はありません。

贈与税の配偶者控除を適用する場合には、贈与を受けた居住用不動産、もしくは贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住したうえで、その後も引き続いて居住する “見込み” であることが要件となります。


持分の贈与のほうがトク!?

リビングで寛ぐ夫婦のイメージ

住宅の持分を贈与して共有にするのがトクなケースも多いが、万一のときにはそれが足かせにもなりかねないので、よく考えて……

贈与を受けた居住用不動産、もしくは贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産は、贈与を受けた妻(または夫)の単独名義にする必要はありません。

また、居住用不動産の現物を贈与する場合には、相続税における評価方法と同じ価格評価がされますので、売買相場価格などよりもかなり安く考えることができます。

一戸建て住宅の場合には家屋の築年数、マンションの場合には土地の持分割合などによってだいぶ差があるものの、売買相場価格の6割~8割程度が相続税評価額です。物件によっては5割を下回るケースもあるでしょう。

たとえば、売買における相場価格が6,000万円の居住用不動産を所有していて、その相続税評価額が4,000万円(土地と建物の合計)だとした場合、2分の1の権利を贈与して、夫婦がともに2分の1ずつの共有持分とすれば、非課税枠内におさまることになります。

もちろん、2,000万円(基礎控除も使えば2,110万円)以内の相続税評価額となる居住用不動産であれば、持分ではなくすべての権利を贈与するのだって構いません。要するに非課税枠内におさまるように持分を調整すればいいわけです。

また、いま現在住んでいる住宅の持分を贈与すれば「翌年3月15日までに居住」という要件も、すんなりとクリアできるでしょう。

なお、夫(または妻)名義で新しく住宅を購入し、それをすぐに配偶者へ贈与したような場合には、相続税評価額ではなく購入金額による贈与とみなされて課税される危険性が高くなります。居住用不動産の現物を贈与する場合には、取得してから数年経ったもののほうが無難です。

建物だけ(あるいはその敷地だけ)の持分などを贈与することも可能ですが、将来的に売却するときのことを考慮すれば、土地と建物をいずれも共有にしておいたほうが有利(各種の特例をともに使えるなど)になるケースが多くなります。

売却する予定がまったくないのであれば、相続時のことを考慮して、土地の権利だけを贈与しておくことも有効でしょう。

ただし、贈与する居住用不動産がマンションの場合には、土地と建物の持分割合を同じにすることが原則です。敷地権の登記がされたマンションでは、土地と建物を違う持分割合にすること自体ができません。

また、新たな住宅購入と同時にこの特例を適用することも有効です。

たとえば、夫の自己資金が2,000万円以上ある場合に、(妻に収入がなくても)妻へ2,000万円(2,110万円)分の持分を与え、残りの購入資金を夫が住宅ローンによって支払うような使い方もできます。もちろん、この場合でも他の要件を満たすように気をつけなければなりません。


贈与税の配偶者控除を適用するときの申告

贈与税の配偶者控除を適用する場合には、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日(贈与税の申告期間)に、住所地を管轄する税務署へ申告します。その際に、贈与税の申告書へ「贈与税の配偶者控除の適用を受ける旨」などを記載するとともに、下記の書類を添付します。

贈与を受けた日の10日後以降に作成された戸籍の謄本または抄本および戸籍の附票の写し
取得した居住用不動産への居住を開始した日以降に作成された住民票の写し
取得した居住用不動産の登記事項証明書


贈与者が3年以内に亡くなったときは?

相続開始前3年以内に被相続人(亡くなった人)から贈与された財産があったとき、通常の贈与ではその贈与財産も相続税の課税価格に加算することになっています。

しかし、贈与税の配偶者控除が適用された財産については、相続開始前3年以内の贈与であっても相続財産に加える必要がありません。ちなみに、贈与されたのと同じ年に贈与者が亡くなったとしても、贈与税の配偶者控除は適用できます。


他の税金は免除にならない

贈与税の配偶者控除により居住用不動産を贈与されたとき、贈与税はまったくかからなかったとしても、不動産取得税登録免許税は話が別です。贈与税以外は普通に課税されるので注意してください。

また、金銭を贈与されて居住用不動産を取得(購入・新築)すれば、当然ながら購入諸費用なども通常どおり必要となります。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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