マンション購入術/デザイナーズマンション

「デザイナーズ住宅」って実際はどうなの?

ひとくちに「デザイナーズマンション」「デザイナーズ住宅」といっても、その実態は……。それぞれメリットもデメリットもあるため、広告のイメージに惑わされないことが大切です。(2017年改訂版、初出:2006年3月)

執筆者:平野 雅之


「デザイナーズ住宅」といってもその内容は千差万別であり、一概に「こうだ」とは判断できない面も多いのですが……。



question
不動産広告で「デザイナーズマンション」や「デザイナーズ住宅」などの文字を見かけることも多いのですが、これらについてどう考えますか? 優れた物件だと解釈しても良いのでしょうか? 実際のところはどうなんでしょう?
(東京都港区 匿名 20代 女性)



answer
統計などを取っているわけではないのではっきりとした根拠はありませんが、住宅の広告などに使われる「デザイナーズ○○」のようなキャッチコピーは、以前に比べて減っているように感じられます。

といっても、決してデザインが軽視されるようになったわけではなく、「デザイナーズ○○」というコピーにユーザーがあまりインパクトを感じなくなってきているのではないでしょうか。

デザイン性のある小物

小物や生活用品だけでなく、住まいでもデザイン性が重視されること自体は喜ばしいことだが……

それはともかくとして、「デザイナーズ○○」についての明確な定義はなく、その内容は千差万別です。

「デザイナーズ」に対する考え方や感じ方も、人によってそれぞれ大きく異なりますから、そのデザインが良いのか悪いのかを判断するのにも非常に難しい面があるでしょう。

デザイン性と機能性を兼ね備えた非常に優れた建物だと感じられるような物件もあれば、その一方で「何じゃコリャ?」と思わず声を出してしまいそうになるような物件も確かに存在します。

これらを「デザイナーズ○○」として、ひとつのイメージで考えること自体に無理がありそうです。また、設計上のデザインが優れていることと、実際に施工された建物のデザインが優れていることは必ずしも一致しないでしょう。

たとえば、数年前に某所で分譲された某「デザイナーズマンション」では、その意匠デザインにヨーロッパの建築家を起用したようなのですが、外壁の配色とその素材が周辺の街並みとかなり不調和で異質なものでした。

さすがに「マズイ」と考えた事業主がデザインの変更を依頼したものの頑として受け入れてもらえず、結局はそのままで販売せざるを得なかったとのこと。

その売れ残り住戸の処分のために私が現地調査に行って、思わず首を傾げてしまった次第です。ちなみに、部屋の間取りなど室内は割と平凡なものでした。

また、ある「デザイナーズ住宅」(建売物件)では、やはり外壁部分ですが、曲線を多用したデザインに現場の職人さんたちがうまく対応できず無理を重ねたのか、かなりちぐはぐな仕上がりになっていたものです。

私はその外観だけでお客様へ紹介する物件の候補から外してしまったので、建物の内部を見ることはありませんでしたが……。

たとえどれほど芸術性の高いデザインだったとしても、それを優れた芸術家が造りあげるわけではなく、実際に施工するのは近所のおっちゃんだったりすることも考えなければなりません。

とはいえ、デザインの優れた物件を否定する気は毛頭ありません。ありきたりな形の「箱」よりも、デザイン性のある住宅のほうが魅力的です。

しかし、デザイナー(建築家)の個性や主張が強く出過ぎてしまうと、それに共鳴できるようなユーザーでなければ、かえって住みづらくなってしまうことも考えられます。将来的に売却するときも不利になることがありそうです。

「デザイナーズ住宅」や「デザイナーズマンション」といってもそれぞれ中身は違いますから一概にはいえませんが、デザインコンセプトを押し付けられて、それに無理やり自分を当てはめようとするのなら本末転倒というべきかもしれません。

優れたデザイナー(建築家)と十分な話し合いを重ねながら家を造りあげていくのなら問題はないでしょう。しかし、建売住宅やマンションで、とくに竣工前に売買契約を締結するときには、自らの想像力をフル回転させて問題点がないかどうかを十分に考えてみることも必要です。

構造上で問題点が生じた場合は別として、自分の想像したものと色合いが違う、デザインがアンバランスだ、曲面のアールがきれいに出ていない、建材の接合部がデザイン性に欠ける、などといっても契約解除の理由にはなりません。

また、住む人の生活スタイルを限定したような間取りや室内デザインのほか、ユニバーサルデザインとは逆に室内の段差を多くした物件などもあるようです。「デザイナーズ○○」であろうとなかろうと、基本的なチェックポイントに変わりはないのです。

非常に優れた「デザイナーズ○○」もあれば、ただ使いづらいだけの「デザイナーズ○○」もあるのですから、広告のキャッチコピーに惑わされて勝手にイメージを膨らませることだけは避けるべきでしょう。ときどきみかける「コンセプト住宅」でも同じことです。

これからは、デザイン性とともに基本性能の高いことが一般的になり、それに加えて機能性、安全性、快適性などがセールスポイントとなる住宅の増えることが望まれます。


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