売買契約書などの訂正は、次のような方法で行なうことが基本です。
誤字や脱字の訂正方法
間違った文字が見えるように二本線で消し、その上部に正しい文字を書き加えます。修正テープや修正液などを使って訂正前の文字を見えなくしてはいけません。そして、訂正部分の近くの欄外に削除した文字数と書き加えた文字数を「2字削除、3字加入」のように記します。削除する文字がなく書き加えるだけの場合には、加える位置を明示したうえで「○字加入」のようにします。
ちなみに、以前は多角数字を使い「弐字削除、参字加入」「伍字削除、壱拾弐字加入」(5字削除、12字加入)のように書く不動産業者も多かったものの、最近はそうでもないようです。
多角数字であれば文字の改ざんも防げるのですが、算用数字(1、2、3……)でもとくに問題はないでしょう。なお、漢字の「一、二、三」は改ざんが容易なため通常は使いません。
「訂正した部分」と「○字削除、○字加入」の部分には、契約当事者(売主と買主)が「署名・押印欄で使ったのと同じ印鑑」を押します。共有名義などで契約当事者が多いときには厄介ですが、全員の印鑑を漏れなく押すことが原則です。
なお、媒介業者は契約当事者ではないため訂正印を押しません。ミスった張本人が媒介業者だとしても、その責任を認めさせるために訂正印が必要なわけではないのです。
訂正印は「○字削除、○字加入」と書いた文字の一部にかかるように押すほうがベターですが、かかっていなくても印鑑の効果には変わりがなく、あまりこだわる必要もないでしょう。
訂正部分への押印は十分なスペースがなければ省略することもできますが、欄外の「○字削除、○字加入」の部分への押印は必須です。
また、同じページの中に訂正部分が複数あるときには、そのページの上部の欄外に、合計文字数で「○字削除、○字加入」のように記します。
契約条項の適用除外の方法
あらかじめ印刷された売買契約書用紙や、パソコン内の決められた書式を使っているときには、不要な契約条項が入っている場合もあります。また、適用するつもりで入れた契約条項でありながら、契約の場におけるお互いの話し合いで適用を除外するケースもあるでしょう。このようなときには、適用を除外する契約条項の近くの欄外に「第○条適用除外」あるいは「第○条全文削除」のように書き加え、契約当事者(売主と買主)が印鑑を押します。使う印鑑や押し方は〔誤字や脱字の訂正方法〕の場合と同じです。
なお、適用を除外する契約条項を二本線で消すかどうかはケースバイケースです。
短い文章の契約条項ならともかく、長い文章の契約条項の上に二本線を引こうとすれば、失敗する可能性が高いだけでなく、書類を汚したり見づらくしたりすることにもなりかねません。無理して二本線を引く必要はないでしょう。
特約条項の追加方法
契約の場におけるお互いの話し合いにより、新たに特約条項を加える場合もあるでしょう。その内容によっては、売買契約書に書き加えるのではなく、別の用紙で覚書や合意書などを作成することもありますが、いずれにしても追加部分が明確になるようにしなければなりません。特約条項を書き加えられるように、あらかじめ専用の空欄を設けた売買契約書の書式を使っている不動産業者もありますが、そうでない場合には想像以上に厄介な作業となることもあります。
また、売買契約書に手書きで特約条項を加えるときには細心の注意が必要で、売買契約書を2通作成する場合であれば、2通ともすべて同じ文言を書かなければならず(カーボン紙を使えば問題はありませんが)、書き損じはできません。
さらに、すでに印刷してある売買契約書の契約条項末尾に「以上」「以下余白」などの記載があれば、その下に特約条項を書き加えること自体に問題が生じます。
そこで、追加する特約条項を別紙として作成し、売買契約書と一緒に綴じたうえで、売買契約書と別紙との間に「契印」を押すことが多いでしょう。「契印」とは、文書の綴り目で2枚の紙へまたがるように印鑑を押すものです。
もちろん、この場合の印鑑も「署名・押印欄で使ったのと同じもの」を使用します。
あるいは、必ずしも推奨できる方法とはいえませんが、特約条項部分を別紙に作成したうえで切り取り、売買契約書の末尾余白部分に貼り付けることも少なからず行なわれています。
このような場合には、貼り付けた紙と下の紙の両方にかかるようにして、契約当事者双方が四隅に印鑑を押しておけば良いでしょう。
なお、特約条項を手書きで加えたとき(専用の空欄がない場合)には「特約条項○字加入」、別紙で加えたときには「特約条項を別紙に記載」などと売買契約書の欄外に記入して、前記と同様の処理をします。
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