不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

売買契約と引き渡し~住宅購入の流れ・手順 6

住宅購入では、売買契約締結から残金決済・引き渡しまでが重要なプロセスです。慌しい日々が続く中で、うっかりミスも許されない段階における注意事項やポイントなどをまとめました。(2017年改訂版、初出:2005年3月)

執筆者:平野 雅之


気に入った物件が見つかり、〔購入物件の決定〕の手順で説明したように物件や周辺環境、資金計画の再チェックなどもして、問題がなければ購入の申し込みをします。

そして、住宅購入の手順もこれからが本番です。何らかのトラブルが生じやすいのもこの段階以降ですから、慌しい動きの中でうっかりミスなどをしないよう気をつけなければなりません。


契約日程は余裕をもって

買主からの購入申し込みに対して売主が承諾をすれば、売買契約を締結する日時の段取りが組まれます。

新築物件の売主業者や販売代理業者、中古物件の媒介業者、いずれの場合であっても不動産業者は1日でも早く売買契約を締結させようとするでしょう。購入の申し込みをしても、売買契約締結前に “心変わり” する買主がいるためです。

住宅街の様子

住宅購入のプロセスもいよいよ本番へ。ミスをしないように余裕のある段取りも大切

バブルの頃には、買主が初めて物件を見学した後にその足で銀行へ行って手付金を用意し、その日のうちに売買契約を締結するようなこともありました。

しかし、いくら不動産業者から急かされようとも、いまの時代はそのようなことをしてはいけません。

とはいえ、とくに個人が売主の中古物件では、契約締結までにあまり期間をおくのも売主に対して失礼でしょう。

その間は他への売却活動ができないため、万一にも契約に至らなければ、売主に思わぬ迷惑を掛ける結果ともなりかねません。

購入の申し込みをしてから1週間~10日後くらいのうちには契約ができるよう、日程の調整に応じたいものです。

ただし、金融機関に対して事前に住宅ローン融資の打診をし、その内定を得てから売買契約を締結するために、あえて契約まで相当の期間をおくように不動産業者側から提案されるケースも少なくありません。

なお、後述する決済は平日の昼間に行なうのが通例(金融機関および登記申請の関係)ですが、売買契約の締結は関係者(売主、買主、媒介業者など)の都合が合えば土曜日、日曜日、あるいは平日の夕刻以降でも大丈夫です。

特別な事情がないかぎり、夫婦(共有名義にする親などがいればその人も)が揃って同席できる日時を設定してもらうようにしましょう。


重要事項説明書などを事前にもらう

理想的には、売買契約締結の数日前に宅地建物取引士から重要事項の説明を受け、そのうえで契約するか否かの最終判断をしたいものです。

しかし、現実には新築物件、中古物件のどちらであっても、売買契約締結の当日、契約に先立って重要事項説明が行なわれるケースが少なくありません。

中古物件などでは、契約がまとまってから媒介業者の担当者が物件調査を行ない、そのうえで重要事項説明書の作成に取り掛かることがあります。

ほとんどの場合は、売主から依頼を受けた媒介業者(元付業者)が販売開始前に物件調査をしていますが、買主側の媒介業者(客付業者)も改めて確認のための調査を行なうのです。

そのため、日程的にあまり余裕がない場合も考えられますが、できるかぎり売買契約締結予定日の数日前に、たとえ作成途中のものであっても重要事項説明書と売買契約書および関係書類を渡してもらうようにしましょう。

マンションの場合であれば管理規約などの写しも、事前に受け取るようにしたいものです。

事前に契約書類へ目を通すことで、不明な事項や質問事項の確認、問題点の有無などが分かるだけでなく、売買契約締結当日に緊張してあがってしまうのを少しでも防ぐことができます。

もっとも、事前にみた書類に何も書かれていなかった問題点が、当日になっていきなり書き足されていると困ります。事前に渡された重要事項説明書などに記載されていない問題点などが発覚したときには、すぐに電話などで連絡してもらうよう、担当者には念を押しておきましょう。

また、先に土地を購入してから注文住宅を建築するようなケースでは、自分の考えているような建物が建てられる土地なのかどうか、ここで再度間違いのない確認をするようにしましょう。できれば建築士によるチェックを受けたいところです。


諸費用の最終確認も忘れずに!

住宅の購入では、売買代金以外に必要な諸経費も多額になります。日割で清算するものは引き渡し日が決まらないと確定しませんが、それ以外の諸費用についてはすべて事前に明確にさせ、想定外の出費で後になって悩まされないようにしなければなりません。

媒介業者に支払う媒介手数料の金額についても、事前にきちんと確認しておきましょう。


売買契約を締結する

売買契約締結の当日は、たとえ契約名義人が夫婦のどちらか一方だとしても、できるかぎり夫婦揃って、また、親などとの共有名義にするのであればその親なども一緒に契約の場へ同席するようにします。

契約当事者である夫が「忙しくてどうしても契約に行けない」という理由で、契約名義人ではない妻だけが契約の場に来るようなケースもありますが、このようなことはぜひ避けていただきたいものです。

握手

あいまいな部分や納得できない部分を残すことなく、気持ちよく契約を終えたい

契約締結に先立って、宅地建物取引士から重要事項の説明が行なわれますが、これも前述したとおりできるかぎり事前に目を通して、問題点などを明確にしておきたいところです。

現実には、その場になって初めて書類を見せられるケースもあるでしょうが、何らかの問題点や不審な点などがあったとき、あいまいなまま契約に進むことなく、納得できるまで説明を受けることが欠かせません。

重要事項の説明が終わると、いよいよ売買契約締結の段取りに進みます。多くの場合は、売買契約書の読み合わせと同時に、各契約条項に対する補足説明なども行なわれますが、なかには単に契約条項を印刷されたとおりに読み上げるだけの不動産業者もいるようです。

売買契約書についても、分からないことがあれば(専門用語が多くてよく分からないことも多いでしょうが)納得できるまで説明を受けるようにします。「こんなこと聞いたら恥ずかしい」とか「いちいち聞くのは申し訳ない」などといった遠慮は一切無用です。

売買契約書への売主と買主双方の署名・押印が終わると、手付金の授受が行なわれます。手付金の支払いと引き換えに、売主からの領収証を受け取って売買契約はめでたく終了です。そして、原則的にはもう後戻りできない段階へと足を踏み入れたことにもなります。

なお、売買契約締結時点で未完成の物件に売買金額の5%を超える手付金(または1,000万円を超える手付金)を支払う場合、あるいは完成済み物件(または業者が売主となる中古住宅など)に売買金額の10%を超える手付金(または1,000万円を超える手付金)を支払う場合には、いずれも所定の保全措置が必要です。

このようなときには、保全措置に基づく保証証書や保証保険証券などと引き換えに手付金を支払うことになります。

また、売買契約書には収入印紙の貼付が必要です。たいていの場合は売買契約締結時点で契約書に貼付しますから、手付金以外に収入印紙代(売買金額によって異なる)も用意しなければなりません。


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