≪住宅購入者は必須! 用途地域の基礎知識≫ では12種類の用途地域について詳しく説明しましたが、この用途地域の規定による建築物の用途制限は全国一律のものです。
しかし、それぞれの風土や特性、歴史的背景、市街地整備の状況や今後の方針などが地域ごとに異なるため、全国一律の用途地域に分類するだけでは不都合が生じかねません。
そこで、“地方公共団体の条例により” 用途地域による建築物の制限を強化(一定の場合には緩和)することができるようにしたものが「特別用途地区」です。
今回はこの「特別用途地区」と、それに似た「特定用途制限地域」について、それぞれの概要をみていくことにしましょう。
特別用途地区は独自に決められる
「特別用途地区」は用途地域による制限を補完するもの
その定義は「用途地域内の一定の地区における当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため当該用途地域の指定を補完して定める地区」(第9条13項)となっています。
したがって、≪住宅購入者は必須! 用途地域の基礎知識≫ で説明した12種類の用途地域のうち、いずれかが指定されたところに “重ねて指定” されるものであり、「特別用途地区」が用途地域の指定がないところに単独で指定されることはありません。
一般的には用途地域による制限を強化する目的のものが大半で(制限の緩和は国土交通大臣の承認を要する)、具体的な制限内容は地方公共団体の条例によって定められます。
そのため、用途地域による規定では建てられるはずの建物が、特別用途地区の指定によって実際には建てられないこともあるので注意が必要です。
なお、特別用途地区指定の類型については従来、中高層階住居専用地区、商業専用地区、特別工業地区、文教地区、小売店舗地区、事務所地区、厚生地区、観光地区、娯楽・レクリエーション地区、特別業務地区、研究開発地区の11種類が定められていました。
しかし、より地域の実情に即した指定や制限ができるようにするため、1998年の都市計画法改正により、その種類や名称も地方公共団体で自由に定めることができるようになっています。
〔特別用途地区の特徴〕
□ 用途地域に重ねて指定される(たいていは制限の強化が目的)
□ 名称や規制内容などを地方公共団体が自由に決められる
□ 都心部などでも特別用途地区に指定されたところが比較的多い
たとえば東京都の場合、従来の指定を引き継いだ「文教地区」と「特別工業地区」が比較的多いものの、「低層階商業業務誘導地区」(荻窪駅周辺)、「特別商業活性化地区」「特別都市型産業等育成地区」「特別住工共生地区」(いずれも三鷹市)など、新しい指定地区もあります。
いずれにしても、地方公共団体によって「特別用途地区」の種類・名称、制限内容などが異なりますから、該当する敷地を購入する場合には、宅地建物取引士から十分に説明を受けることが欠かせません。
特定用途制限地域とは?
特別用途地区が用途地域に重ねて指定されるのに対し、「特定用途制限地域」は用途地域が定められていない非線引き都市計画区域または準都市計画区域において指定されるものです。2000年の都市計画法および建築基準法の改正により創設されました。「特定用途制限地域」について都市計画法では、「用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く)内において、その良好な環境の形成又は保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域」(第9条14項)と定義されています。
その名称からも分かるように、特定の用途の建築物などが制限される地域で、具体的な内容は地方公共団体の条例によって定められます。
制度のスタートから5年後の2005年4月1日現在では、特定用途制限地域の指定が全国で12都市にすぎず、その制限内容も大規模店舗の立地に関するものばかりでした。
しかし、2015年3月31日現在では61都市に増え、一定規模以上の工場や風俗営業施設、遊戯施設の立地を制限するものをはじめ、さまざまなタイプのものが定められているようです。
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