都市部におけるビルやマンションの高層化を後押ししている制度として、前回は「高度利用地区」と「特定街区」を取り上げましたが、そのほかにも都市計画法による「地域地区」にはいくつかの規定があります。今回はそのなかから「特例容積率適用地区」と「高層住居誘導地区」について説明することにしましょう。


特例容積率適用地区とは?

高層ビル
都市部におけるビルやマンションの高層化を後押しする制度は多い
都心部など、もともと指定された容積率が比較的大きなエリアでも、歴史的建造物があったり、火災のときの延焼防止に役立つ屋敷林があったりして、容積率があまり消化されていない敷地が少なくありません。

このような敷地で使われずに残っている未利用容積(将来的にも使う予定がない部分)を他の敷地に上乗せし、土地の有効利用を図ろうとするのが「特例容積率適用地区」です。たとえば、都市計画により指定された容積率が500%で、同じ面積の2つの敷地があったとき、一方が200%までしか容積率を使っていなければ、他方の容積率を800%まで認める(両方の合計は同じ)わけです。ただし、周囲の状況などに応じて建築物の高さの最高限度や、対象敷地面積の最低限度が定められる場合があります。

なお、この「敷地間の容積の移転」は「特例容積率適用地区」に指定された同じ地区内で認められるものであり、たとえば六本木で余った容積率を渋谷へ持っていったり、名古屋、大阪で使えたりするわけではありません。

また、特例容積率適用地区は都市計画のなかでその範囲などが定められるだけであり、容積移転の適用は土地所有者など権利者からの申請に基づいて特定行政庁が指定します。このときに該当する2以上の敷地のことを「特例敷地」といいますが、いくら容積率を使用していないといっても、道路や線路敷、公共公園などは特例敷地になりません。

ちなみに、この制度は平成12年(2000年)の都市計画法および建築基準法の改正(平成13年5月施行)により創設された「特例容積率適用 “区域” 」が、平成16年(2004年)の改正(平成17年6月施行)で拡充されて「特例容積率適用 “地区” 」となったものです。適用対象が「特例容積率適用区域」のときには商業地域のみだったのに対し、「特例容積率適用地区」では第一種・第二種低層住居専用地域および工業専用地域を除く、9つの用途地域内で定めることができるようになりました。

しかし、これまでのところ実際の適用例は東京「大手町・丸の内・有楽町地区」(平成14年) など、ごく一部に留まっています。今後、密集市街地における建築物の共同化や、老朽マンションの建て替えなどに応用されることも期待されていますが、どこまで普及するかは未知数。余った容積の移転・買収(空中権の売買)に伴い多額の費用を要することも大きなネックでしょう。


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