世界遺産/アフリカ・オセアニアの世界遺産

アブシンベル/エジプト(2ページ目)

ピラミッドと並び、もっともエジプトらしい遺跡アブシンベル。その美は水没の危機に際して世界を動かし、世界遺産条約のきっかけになった。今回はアブシンベルに込められたふたつの想いを紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

エジプト史上最高の神殿アブシンベル

アブシンベル大神殿。座像はいずれもラムセス2世像。ラムセス2世が太陽神を名乗ったように、ファラオは神として古代エジプトを統治した

アブシンベル大神殿。座像はいずれもラムセス2世像。ラムセス2世が太陽神を名乗ったように、ファラオは神として古代エジプトを統治した

アブシンベル大神殿。近づいて見上げるとその巨大さを実感する

アブシンベル大神殿。近づいて見上げるとその巨大さを実感する

アスワンから飛行機に乗り、ナセル湖上を南に約280km飛ぶ。アブシンベル空港に降り立つと、バスに乗り換える。やがてふたつの小さな山が見える。正面に回って山を見上げると、みんなの反応は同じだ。――驚く。

アブシンベルは小さな岩山をくり抜いて造られた大小ふたつの神殿からなる。大神殿は高さ33m、幅38m、奥行き63mにもなり、高さ20m以上に達する4体のラムセス2世像が見下ろしている。4対の像の頭上には太陽神ラーとそれを礼拝するヒヒの像が並び、足下には王妃や王子の像やレリーフがビッシリ刻み込まれている。世界中を探しても、繊細さとスケールがこれほど融合した遺跡はなかなかない。

 

大神殿の大列柱室。立像はすべて神化したラムセス2世像。壁には戦争や神々との交流を描いたレリーフがビッシリと刻まれている

大神殿の大列柱室。立像はすべて神化したラムセス2世像。壁には戦争や神々との交流を描いたレリーフがビッシリと刻まれている

大神殿の中は、日本人がイメージするエジプトそのものだ。入り口を入ってすぐの大列柱室には、高さ約10mにもなるラムセス2世像が8体並び、周囲の壁や天井はレリーフやヒエログリフと呼ばれる特有の文字で埋め尽くされている。

最深部は至聖所と呼ばれ、4体の神像が並んでいる。神像の位置は細かく計算されており、毎年10月と2月の20日の2日だけ、闇に暮らす冥界の神ブタハを除いた3体の像を、60mもの回廊を通り抜けて朝日が照らす。このサン・フェスティバルは観光客も見ることができるが、後述する移転にともなって数日ずれたといわれている。

一方、小神殿は愛と美の神ハトホル神を祀っていることからハトホル神殿、あるいは王妃ネフェルタリに捧げられたことからネフェルタリ神殿と呼ばれている。高さ約10mの6体の立像のうち4体がラムセス2世像で、2体がネフェルタリ像だ。 
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