パン/パン屋さん取材レポート(西日本)

ル・シュクレ・クール(大阪・吹田)(2ページ目)

パリのブーランジェリー界随一の革命児、エリック・カイザー。彼のパン作りをいち早く取り入れて実践している、「ル・シュクレ・クール」。香り、味わいともに非常に優しいブーランジェリーです。

執筆者:来栖 けい

「レ・サンク・ディアマン」

イチオシは、バゲット生地に、5種類のドライフルーツ(オレンジピール、ドライフィグ、レーズン、サルタナ、カレンズ)とくるみを練り込んだ、「レ・サンク・ディアマン」(180円)。

先にも述べたように、ここのバゲット自体は口溶けがよくて穏やかな味わいなのですが、この商品にはドライフルーツ&くるみがこれでもか! というくらいたっぷりと練り込まれているので、バゲットよりもキュッと詰まった印象。ずっしり重く、焼き色も濃いめ。随所随所のインパクトが非常に強い一品です。口に含むと、甘み、酸味、苦み。香ばしさetc…、様々な要素が複雑に交わりながら、嗅覚、味覚を圧倒します。

オレンジピールは比較的上品で、色も非常に淡い。クリアな味と香りが特徴です。ドライフィグはねっとりやわらかく、濃密な甘みを備えながらも、濃厚すぎずキレイな味。プチプチ弾ける種の食感が心地よいアクセントですね。

また3種類のレーズン(レーズン、サルタナ、カレンズ)は、それぞれが違った甘み、酸味を持っているので、それが口の中で仲良く手を取り合うことで、より重層的なテイストが生み出されています。噛むほどに溢れるジューシーなエキス、コリコリ心地よいくるみの芳香。食べ手の心を惹きつけるあらゆる要素が、ここにすべて集約されているというわけですね。

ただ、本当に凄いのは、それらの要素が何の違和感もなくキレイにまとまっていること。そしてこれだけしっかりと主張していながら、それを支えているのはあくまでも生地なんだということがはっきりと感じられること。

噛み締めると同時に、ドライフルーツやくるみの風味がググッと前面に出てくるので、生地の旨みはその陰に隠れる形となりますが、食べ進めるほどに芯のある旨みを実感します。実にしっかりとした土台ですね。

ドライフルーツ&くるみの量があまりに多いので、生地はそれらの「繋ぎ役」と誤解されてしまうこともあるかもしれませんが、それは違うと断言できます。ドライフルーツ&くるみが「演奏者」であるなら、生地はそれらをまとめ上げる立派な「指揮者」。この関係が実によくあらわれた一品だと思います。
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