世界遺産/中国の世界遺産

天壇/中国(4ページ目)

皇帝が天と交流する祭祀施設、壇。北京にいくつかある壇のうち、もっとも巨大で華麗なのが天壇だ。天壇には祈年殿と圜丘壇というふたつの壇があり、いずれの空気も摩訶不思議。かつては皇帝だけが立つことを許されたパワースポット、天壇を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

天と会話する祭壇、圜丘壇

方形の外壁と円形の内壁に囲まれた圜丘壇。天と直接交流するために当初から建物を設けなかったといわれている ©牧哲雄

方形の外壁と円形の内壁に囲まれた圜丘壇。天と直接交流するために当初から建物を設けなかったといわれている ©牧哲雄

冒頭で紹介した9の倍数の欄干や石板で構成された基壇が圜丘壇だ。皇帝は冬至になるとここを訪れ、中央にはめ込まれた天心石に立って三跪九拝(さんききゅうはい)の礼をとり、祈りを捧げた。

基壇だけで建物がないからか、ここは祈年殿以上に不思議な空気をまとっている。でも最上段の層を歩き、同心円状に並んだ石板の中央、天心石の上に立つとなんとなくその意味がわかる。こここそが大地の中心なのだと。

この天心石、かつては皇帝以外が立つことを許されなかった。いまではここに立つと幸福になれるということで、多くの観光客が祈りを捧げている。天心石の上で声を出すと4方からこだまが返ってくるが、これも天との会話を意識して、音響反射を使って設計されたものだ。

壇のすべての石板を合計すると3402枚で、これも9の倍数となる。そもそも奇数を重要視するのは陰陽思想の影響で、陰数=偶数が地を表すのに対し、陽数=奇数は天を示すといわれた。なかでも9は十進法における最大の数。よって天をもっともよく象徴する数とみなされた。

神の位牌を収める皇穹宇

高さ19.5m、直径15.5m、明代の1530年に完成した皇穹宇。こちらは正殿で、天を表す円形の造り ©牧哲雄

高さ19.5m、直径15.5m、明代の1530年に完成した皇穹宇。こちらは正殿で、天を表す円形の造り ©牧哲雄

祈年殿、圜丘壇をつなぐ南北360mの丹陛橋の途中にあるのが皇穹宇だ。

皇穹宇の内部。やはり金と青を中心とした極彩色の空間 ©牧哲雄

皇穹宇の内部。やはり金と青を中心とした極彩色の空間 ©牧哲雄

祭祀の際、皇帝はここに神位を表す位牌を置いて臨んだという。位牌は複数あって、太陽や月、彗星、金星、火星、木星、土星、北斗七星などを示すものもある。やはり天に属する建物で、正殿は円と奇数を基本に構成され、円形の壁に囲まれている。

おもしろいのが円形の壁で、壁に向かって話した会話が数十m離れた反対側でも聞こえるところから回音壁と呼ばれている。これは滑らかな壁に音が反射を繰り返して進んで遠くまで伝わる現象で、世界にいくつか存在する「ささやきの壁」「ささやきの回廊」と呼ばれるものと同じ原理だ。残念ながらいまは柵があって試しにくくなっている。

さらに庭には3音石があり、第1石で手を叩くとこだまが1度、第2石だと2度、第3石だと3度返ってくるという。天壇にはこのように音を使った仕掛けが多い。ぜひ自分で確かめてみよう。 
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