天と会話する祭壇、圜丘壇
方形の外壁と円形の内壁に囲まれた圜丘壇。天と直接交流するために当初から建物を設けなかったといわれている ©牧哲雄
基壇だけで建物がないからか、ここは祈年殿以上に不思議な空気をまとっている。でも最上段の層を歩き、同心円状に並んだ石板の中央、天心石の上に立つとなんとなくその意味がわかる。こここそが大地の中心なのだと。
この天心石、かつては皇帝以外が立つことを許されなかった。いまではここに立つと幸福になれるということで、多くの観光客が祈りを捧げている。天心石の上で声を出すと4方からこだまが返ってくるが、これも天との会話を意識して、音響反射を使って設計されたものだ。
壇のすべての石板を合計すると3402枚で、これも9の倍数となる。そもそも奇数を重要視するのは陰陽思想の影響で、陰数=偶数が地を表すのに対し、陽数=奇数は天を示すといわれた。なかでも9は十進法における最大の数。よって天をもっともよく象徴する数とみなされた。
神の位牌を収める皇穹宇
高さ19.5m、直径15.5m、明代の1530年に完成した皇穹宇。こちらは正殿で、天を表す円形の造り ©牧哲雄
皇穹宇の内部。やはり金と青を中心とした極彩色の空間 ©牧哲雄
おもしろいのが円形の壁で、壁に向かって話した会話が数十m離れた反対側でも聞こえるところから回音壁と呼ばれている。これは滑らかな壁に音が反射を繰り返して進んで遠くまで伝わる現象で、世界にいくつか存在する「ささやきの壁」「ささやきの回廊」と呼ばれるものと同じ原理だ。残念ながらいまは柵があって試しにくくなっている。
さらに庭には3音石があり、第1石で手を叩くとこだまが1度、第2石だと2度、第3石だと3度返ってくるという。天壇にはこのように音を使った仕掛けが多い。ぜひ自分で確かめてみよう。