一流の味をお手軽に
|
木の温もりが感じられる外観。 |
注) 「ラ・プレーヌ・リュヌ」は移転されました。当記事は移転前の記事となります。ご注意くださいませ。
京都のフレンチレストラン「
ラ・プレーヌ・リュヌ」。シェフは西居尚映氏で、ホテルオークラの「ピトレスク」から独立後、2006年5月にこのレストランを開店されました。場所は綾小路堺町の一角にあるマンションの1階。カウンター2席、テーブル席10席の一軒です。
料理はシェフがすべてを取り仕切っておられるので、ドーンと置かれた目の前の一皿にはシェフのポリシー・力量がそのまま具現化しています。私はこのレストランのように全てを1人で作り出されている小さなレストランと出逢うと、とにかく嬉しくなります。
|
宮城県産小鴨のココット料理。使われているのは胸肉です。 |
というのも、よほど有能なスーシェフや弟子が厨房を固めている場合は別ですが、やはり、シェフの真技を堪能するには、シェフお一人で調理されている夫婦二人三脚の小さなレストランが一番だと思うのです。
パリのグランメゾンや日本の某有名料亭もそうですが、世界に名だたる三つ星クラスの店も、元はといえばご夫婦二人でこじんまりと始められたところが少なくありません。現在まだ34歳の西居シェフのこだわりと挑戦が、基本的なフレンチ料理の枠を超えて、今後どのようなオリジナル料理を紡ぎ出してくれるか、大いに期待の持てるプチ・メゾンです。
可愛さ溢れる落ち着いた店内
|
BGMは控えめにシャンソンのメロディーだけ。 |
インテリアは白い壁に、淡いクリームイエローのソファや椅子。テーブルクロスも同じく明るいイエローで統一されていて、優しく可愛い空気に包まれます。天井の真ん中には店名通り「満月」のような照明がほのかな月の光のようにテーブルを照らしていて、隅っこに小さなウサギがちょこんと座っていてもおかしくない雰囲気です。
多彩な前菜達
今回お願いしたのはアミューズ+前菜+フォアグラの前菜+魚料理+肉料理+デザート+カフェで5,250円のコース。他にも3,990円と要予約の8,400円のコースがあります。
尚、グラスワインが8種類も揃っており、ヴァン・ムスーを含めてすべて630円という良心的な値段設定には驚きです。
まず、卵を使ったアミューズが供され、続いて前菜の
「ボタン海老のロースト 秋トリュフを添えて」が登場。
|
ボタン海老のロースト 秋トリュフを添えて |
ボタン海老のローストはヘーゼルナッツ風味のオイルとシェリーヴィネガーのソースでいただきます。ジロール茸やエシャロットを白ワインで甘酸っぱく煮込んだものがソースに程良い甘味と円やかな酸味を与え、深みのある味わいに仕上げられているのです。秋トリュフもたんまりと添えられており、官能的な香りが秋を感じさせてくれます。
・フォアグラのポワレ ヴェルジュソース
|
フォアグラのポワレ ヴェルジュソース |
フォアグラのポワレに、ヴェルジュソースとマスカットとルッコラを添えた一皿。ヴェルジュ(Verjus)ソースとは、ソースの味付けに使う酸味のあるぶどう汁を使った白ワインソースで、用いられている葡萄の品種はヴェルジュラックセミヨン。拡がりのある甘味とセミオンらしいキュンとした酸味感が、フォアグラの濃厚な味わいを中和しながらも一層引き立てます。フォアグラ料理はあまり量的には食べたくないことが多いのですが、このフォアグラ料理はいくらでも食べていたくなる程の軽やかさと美味しさの吸引力がありました。また、ソースがセミヨン品種ということもあり、この甘く陶酔的な味わいには貴腐ワインが一杯欲しいところですね。
・メバルのポワレ タップナードのソースで
|
メバルのポワレ タップナードのソースで |
バジル等のハーブ香が漂う魚料理。ぷっくりと火入れされたメバルの下にはラタトゥイユが敷かれてあり、これらと一緒にタップナードソースで食すと、香味・酸味・脂味が三位一体化した極めて完成度の高い味わいとなります。正直、メバルをここまで美味しいと思ったのは初めてのことで、今回のコースの中でも、もっとも心に響いた傑作料理でした。