セクシュアルマイノリティ・同性愛/ゲイライフ

オランダで同性結婚した日本人、龍児さん(4ページ目)

2001年、世界で初めて同性婚が認められたばかりのオランダで同性結婚したことをblogに書いて有名になった龍児さんにインタビューをさせていただきました。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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日本で同性婚が実現する日を夢見て


龍児&ジャック
8周年の結婚記念日の写真。愛する猫たちもいっしょです
–– オランダで同性婚が実現するようになった経緯を簡単に教えてください。

龍児:オランダでは、地方レベルから国レベルまでオープンリーなゲイやレズビアンの政治家がたくさんいる。それとCOCがロビーイングして、そういう人たちの活動のおかげで実現しました。

–– 日本ではまだオープンなゲイやレズビアンの政治家がいないので…そこからスタートなのかな。

龍児:暗殺されてしまったけど、もしかしたら首相になったかもしれないというゲイの政治家もいた。

–– ハーベイ・ミルクのように?

龍児:ミルクのようにゲイのことを前面に押し出してたっていうより、たまたまゲイだった。ゲイだから暗殺されたわけではなく、政策がタカ派だったので。反対する若者に殺されたんです。

–– そんなことがあったんですね…。最近、ネットのニュースで、オランダの小学校で同性愛のことを授業で教えようという法案が提出されたと聞きました。

ジャック:まだ法案は通ってないけど、都市によってはすでにそうなっている。仲のいい友達がゲイの活動家で、地域政治家としていろんなことをやってて。彼も推して、法案を提出したけど、議会の反対で押し戻された。でも、教育文化大臣がとても開けた人で、積極的に賛成してくれているので、もう一度法案が提出される見込みです。それに、正式に授業で教えられなくても、オランダの小学生はみんな同性愛のことを知ってる。たとえば親戚の伯父さんがそうだとか、隣がゲイのカップルだとか、都市部ではふつうのこと。田舎のほうは違うけど。

–– 同性婚が認められたらゴール、ではなく、いろんなことがあるんですね。

龍児:日本でも同性婚を、とがんばっていらっしゃると思いますが、同性婚したらしたで、課題は出てくる。ゲイの介護の問題とか、老後の問題とか。でも、今までのゲイムーブメントを見ても、オランダは最初に実現してきたので、きっといち早くやり始めると思う。お手本じゃないけど、1つの進み方を提示するだろうと。

–– オランダという最先端の国と日本を両方知っている龍児さんから見ると、日本では同性婚って難しいと思いますか? 実現するためにどんなことが必要だと思います? 

龍児:僕はカムアウト賛成論者ではない。その人自身が考えて決めることだと思う。だけど、同性婚を認めてもらおうと思うんだったら、いつまでも隠れていてはダメ。そういったところを踏まえながら、ゲイだけど僕らもみなさんと同じ市民なんです、というところをアピールしないと。欧米の社会は「ゲイです。ちゃんとしてるから差別しないで」と前面に出していく。日本でそれはできないとしたら、どういうふうにして主張していくか。日本の風土習慣に合った、日本独特のやり方が何かあるはず。

–– 社会が違うっていうのは前から言われていて。宗教的なアンチがなく、やんわりとした、あからさまな攻撃ではない形の、なんとなくの排除とか無視とか嘲笑。

龍児:表立った差別ではないですよね。ホロコーストなどでゲイが虐殺された歴史もない。

–– そうですね…。平和的なパレードも成功させてきたし、選挙にもチャレンジしたり、今もいろいろやっていますが、パワーを持った大きな運動にはなかなかならない。

龍児:本当に実現させたいのであれば、ある時点で強く出るか、フレンドリーな政治家を見つけてうまくロビーを立てていくということ。世間の方々の同意を求めるためには、自分たちがしっかりとした市民生活を営む必要があるし、自分の周りから少しずつ変えていくことが大事だと思います。僕のblogを読んでる方の中にも「私も同じ」と共感してくれるストレートの人がいて。そういう人たちがふえていけばいいなと思う。ゲイコミュニティの中では全員が同性婚に関して共感するっていうのは無理にしても、少なくとも、がんばってる人たちの足を引っ張るのはやめたほうがいいと思います。とても悲しいこと。 

–– 本当にそうですね。では最後に、何か、これからの夢とか、こういうふうに今後していきたいっていうことがあれば、教えてください。

龍児:おたがい健康で長くいっしょに暮らしていけること。夢っていう大きいことはないけど。安定した老後とか。僕らも中年後期にさしかかってきたし。健康がいちばんかな。
ジャック:僕ら8年の年の差があって、僕のほうが先に引退する。でも、家に一人でいるのはいやだから、できるだけ長く働きたい。これから先は、旅行したり、人生を楽しんでいきたい。

–– どうもありがとうございました。これからも末永くお幸せに!
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