第一幕(1941年)
イメージ(ブロードウェイ版)。前半はイカニモ上流階級といった豪邸での一幕です |
ニューヨーク州ロングアイランドにある大邸宅グレイ・ガーデンズが舞台です。第一幕は、イディの婚約祝いのパーティの日。彼女の人生の絶頂です。元歌手だったイディスは、自分のために作曲までしてくれるお抱えの音楽家グールドを家に住まわせるという、贅沢な生活をしています(まるでモーツァルトの時代の王侯貴族のよう…)
イディスは、ひまさえあればグールドのピアノ伴奏で優雅に歌いながら暮らしています。ここに、ちょっとした隠し味が施されていました。婚約パーティの準備に「パンジーが必要」と聞いたグールドは「僕のこと?」とおどけて言うのです。そのネタ振りに対してイディスは「今はそういう人たちのことを言いたいわけじゃないの」とツッコミを入れます。パンジーとは、ゲイを意味する当時の隠語でした。たぶんほとんどの観客はこの作曲家とイディスが愛人関係にあるのでは?と思いながら舞台を観ているはずですが、わかる人には真実がわかるのです。その続きのシーンでは、イディの婚約者ジョセフがグールドと握手をしたがらず、ロコツに嫌悪感を示している様子が描かれています。まだゲイが激しく差別されていた時代を物語るエピソードです。
母イディスは自己顕示欲が強い人で、何かパーティがあるとでしゃばって歌を披露しようとします。娘イディはそれがイヤで、自分の婚約祝いでは歌わないようにと釘をさし、ケンカになります。が、母が「今日は歌うな」と父(イディの祖父)にたしなめられ、しょげていると、今度は母をなぐさめはじめ、「1曲だけ歌って、お母様」と言うのです。
母と娘の、この愛憎半ばするような、複雑ながら強い感情で結ばれた関係は、後々まで続いていきます…