「死」~伝説となったハーヴェイが遺したメッセージ


ダンとミルク
「憎まれ役」ダン・ホワイトをジョシュ・ブローリンが演じ、アカデミー助演男優賞にノミネートされました
『ミルク』を撮ったガス・ヴァン・サント監督は、『マイ・プライベート・アイダホ』や『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』など、様々な作品を世に送り出してきましたが、もともとゲイにこだわっていたわけではなく、若くて美しくてアウトサイダー的な青年を主人公に、その生き様を静謐で詩情豊かな映像美で表現するタイプの作家でした。

『ミルク』には、ガス・ヴァン・サント監督が『エレファント』や『ラストデイズ』で描いたことにどこか通じるような…死を覚悟した人間のある種の「美しさ」「せつなさ」が表現されていたように感じました。
大衆を先導/煽動するハーヴェイの力強さとは対照的に見えながら、実はその力強さの源でもあるようなこと…死を賭してでも貫きたい「生」の崇高さのようなものが、ショーン・ペンの演技に表れていたのです。


それにしても、ハーヴェイがもっと生きていてくれたら…と、誰もがその思うことでしょう。きっとカリフォルニア州の同性婚禁止法案だって通りはしなかったでしょうし、すでに全米で同性婚が実現していたかもしれません。もしかしたらオバマ氏のような大統領候補になっていたかもしれません。

ハーヴェイが政治を通じてゲイピープルに「希望」を与えてきた姿は、よく、オバマ大統領とシンクロすると言われます。アフロアメリカンもまた、同性愛者以上の過酷さでその「幸せ」を脅かされてきたからです。

ハーヴェイ・ミルクはある意味、イエス・キリストのように殉教し、伝説となることで、僕らに多くのものを遺しました。ゲイである自分を愛すること、カミングアウトすること、仲間たちとつながり支え合っていくこと、メッセージを発信していくこと…今でもその言葉は語り継がれ、『ミルク』の脚本を書いたダスティン・ランス・ブラックがまさにそうだったように、田舎で孤独にうちふるえている子どもたちの「命」を救ったり、多くの人たちを勇気づけているのです。

ミルク
ミルク
2008/アメリカ/配給:ピックス/監督:ガス・ヴァン・サント/脚本:ダスティン・ランス・ブラック/出演:ショーン・ペン、ジェイムズ・フランコ、ジョシュ・ブローリン、エミール・ハーシュ、ディエゴ・ルナほか/シネマライズ、シネカノン有楽町2丁目、新宿バルト9他にて全国ロードショー
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