マサイの人たちへの理解も深まる1冊
『私の夫はマサイ戦士』永松真紀 著 ¥1300(税別) 新潮社 |
著者が感じたカルチャーギャップの追体験も目的としていますから、なるべく違った文化を選ぶように、自然に手が動いていくようです。
そういう意味では、このタイトルには惹かれましたねえ。
「えっ、このような日本人女性がいるの!? マサイ族の人との結婚は可能なの?」と、まず思ってしまいました。
本のオビに書かれた文字は「結納金は牛4頭」「嫁入り道具はひょうたん4つ」「そして、私が『第二夫人』になった理由――」。
う~ん、ますます読みたくなるではありませんか!
著者の永松真紀さんは、現役の旅行添乗員で、20代の頃からツアーで世界中を駆け回っていました。その間、なぜかケニアに惹かれ、プライベートで何度か訪れます。
こういうきっかけ(=なぜか“ある国”に無性に惹かれる)って、国際結婚カップルには割と多いですよね。やはり何かご縁があるからなのでしょうか。
永松さんも、そんなきっかけから、やがて現在の夫であるマサイ戦士のジャクソンさんと出会うわけですが、実はそれまでに、婚約解消や別のケニア人男性との結婚・離婚、ケニアでの起業なども経験されています。
この辺りのことは、第一章と第二章に書かれていて、海外で生き抜いていく日本人女性のバイタリティーが感じられ、とてもポジティブな気持ちにさせられます。
同時に、“好きな国に住めば住むほど、その国の嫌な面がどんどん見えてきてしまう”という、海外居住者がある時期経験するつらいプロセスも的確に描かれており、共感できる部分も多いですよ。
そして、第三章以降は、いよいよ出会いから結婚へ……。
しかし、私がどこかで期待していた“オモシロおかしいカルチャーギャップ”みたいなものはほとんどなく、とてもひたむきに、まっすぐに、結婚というものに向かっていくお2人の様子が、とても心に残ります。もちろん、いろいろな出来事はあるのですが、ことさら騒ぎたてず、地に足をつけて乗り越えていく……みたいなところが感じられるのです。
これはひとえに、マサイの人たちの生き方によるものではないでしょうか。
読んでいると、著者と同時進行でマサイ戦士たちへの理解が深まっていくのですが、非常に清々しいというか、清廉な生き方をしている人たちであることがよく分かります。
そんな文化を学ぶ書としても、おすすめできますよ。
<目次>
第一章 ケニアに降り立った日
偶然聴いた『風に立つライオン』
二一歳、初めてのケニア
ある日本人女性との出会い
観光客から生活者へ
見つけた自分の居場所
第二章 見えてきた本当のケニア
私を虜にした「マタトゥ」
マタトゥ経営者になる
この国が嫌いになっていく
結婚、そして離婚
真実を伝えたい
第三章 ジャクソンとの出会い
マサイの魅力
伝統文化への誇り
本物の戦士、ジャクソン
「心の恋人」との再会
第四章 人生最大の決断
「第二夫人として迎えたい」
血と神が決めた
ジャクソン、ナイロビへゆく
人生最大の決断
結納金は牛四頭
第五章 マサイに嫁ぐ日
感じ始めた疎外感
一夫多妻制の意味
悩みが尽きない性生活
嫁入り道具は四本の瓢箪
マサイに嫁ぐ日
授けられた名前
第六章 新たな生活の始まり
妻の証の家を建てる
結婚が認められない?
新婚旅行、初めて見た海
あまりにドライな死生観
添乗員、そして妻として
私がマサイにできること
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