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幸せから一転、国際結婚で発症する「うつ」とは? 実例をご紹介

国際結婚がきっかけで「うつ」や「引きこもり」になってしまう人、実はけっこう多いのです。華やかに見える国際結婚や外国生活の裏に、一体どんな事情がひそんでいるのでしょうか? 異文化ストレスがうつの引き金になってしまうことが多いのです。

執筆者:シャウウェッカー 光代

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国際結婚……「異文化ストレス」がうつの引き金に

国際結婚で発症する「うつ」とは

幸せなはずだった結婚生活が……

外国人のパートナーと幸せな結婚、海外で暮らし日本と行ったり来たりの生活……など、一見華やかなイメージの国際結婚ですが、実は「うつ」を発症したり「引きこもり」になってしまう人が意外に多いことは、あまり知られていません。

特に、カップルのうち、母国を離れて外国に暮らしている側に、この症状が多く見受けられます。

これは、自分が生まれ育ったのとは異なる文化・異なる言語で生活するときに出てきやすい症状で、そのような環境下で生じる抑圧された状態を「異文化ストレス」と呼んでいます。国際結婚では、この異文化ストレスがうつの引き金になってしまうことが多いのです。その実例をご紹介しましょう。
 

思いもよらなかった環境の激変で

A子さんは語学留学をしていて、現在のご主人と知り合い結婚、その国で暮らすことになりました。既に1年以上住んでいたので、生活にはもう慣れていたし、言葉もそこそこ話せましたから、そのまま居住することには何の不安もありませんでした。むしろ、その国にずっと住みたいと思っていたので、結婚が決まってとても喜んでいたくらいです。

ところが、結婚後に住むことになったのは郊外のアパート。それまではダウンタウンのアパートに住み、友達もみな周辺にいたので、つまらなくなると誰かを呼び出したり、夜遅くまでカフェでおしゃべりしたりと、とても楽しく過ごしていましたが、そうもいかなくなりました。周りは住宅地でそんなお店はなく、夜は早く帰らないと危ない雰囲気。もちろん友達は誰も近くにいませんし……。

ダウンタウンに出るのも大変でした。まだ車の免許を持っていないので、バスを乗り継いで行くのですが40~50分かかります。免許を取ることも考えましたが、今の経済状態では、自分用の車を買うのは無理そうです。

それでも結婚当初は、まだ友達が代わる代わる遊びに来てくれるのでよかったのです。女の子たちからはうらやましがられたりしますから、ちょっと鼻高々でもありました。

しかし、1人帰り、2人帰り、やがてほとんどの友達が日本に帰国してしまいました。語学学校に通っているわけではないので、新しい友達もなかなかできません。働こうにも就労可能なビザがまだ取れていない、ウエイティングの状態なのです。

A子さんは、次第に家で1人で過ごすことが多くなってきました。
 

「うつ状態」「引きこもり」の始まり

始めの頃はA子さんも努力していたのです。近所の人と積極的に話すようにしたり、ご主人の会社のイベントに参加したり……。

しかし、ここに別の問題が生じてきました。そういった人たちの会話があまりに早く、聞き取れないことがしばしばあるのです。社会に出て初めて、語学学校の先生はかなりゆっくり話してくれていたことに気づきました。

また、自分の言葉が通じなくて、何度も聞き返されたりすることがあるとすっかり自信喪失して、だんだん話すのが怖くなってしまいました。

これが“負のスパイラル”の始まりでした。取り巻く環境の激変と自身の内面的な落ち込みから、A子さんには、うつ状態が現れるようになり、完全な「引きこもり」になってしまったのです。
生活リズムも乱れ、どんどん悪循環に

生活リズムも乱れ、どんどん悪循環に

昼間はだらだらテレビを見たりネットサーフィンをしたりして過ごします。買い物に出られないので、食料品などはたいてい週末に2人で買い出しに。ご主人と一緒だったら外出できますし、夫婦の会話もあるのですが、1人では何もできません。スナックやインスタント食品ばかりで食事内容が乱れ、体力が低下して、ますます覇気がなくなってきました。

メールで日本の友人に窮状を訴えたこともありましたが、真剣に取り合ってもらえず、「優しいダンナさんがいて、外国に住めるのに、何ぜいたくなこと言ってんの」と言われてしまい、それ以来、誰にも相談できなくなりました。家族にも、心配かけるといけないと思い、何も伝えていません。

A子さんとしては、結婚生活は“楽しかった留学生生活の延長”のように捉えていたのに、思いもよらない環境の変化に直面し、それ以上に、明るく積極的な性格だった自分がまさか引きこもりになろうとは……と、自身の変調にもショックを受けていました。

それでも、「克服しよう」という気力は湧き上がってこなかったのです。無気力は生活全般に及んでいきました。
 

夫婦仲にも影響が……

結局、A子さんの引きこもりは1年近く続きました。

症状が出始めたころは、叱咤激励していたご主人。引きこもりがうつ状態から来ているとは思わず、ただ「やる気を出さない」「怠けている」と考えていました。改善のための話し合いを何度も持ちかけ、夫としての要求も突き付けてきましたし、「君には失望した」という言葉をA子さんに投げつけることもありました。

説明したくても、A子さん自身、自分の状態をうまく言葉にできず、夫婦の間にギクシャクした空気が漂うようにまでなってしまったのです。
 

決意の帰国

しかし、その状態が半年も続いていると、さすがにご主人も「これはおかしい」と気付き始めました。

結婚当初はいつも家をピカピカに磨いていた妻が、掃除をしなくなり、散らかり放題の部屋に平然といるのです。メイクもせず、1日中パジャマを着たまま……ということもよくありました。

やがて、カウンセラーをしている友人に相談したことがきっかけで、妻がうつかもしれないということが分かってきました。その後は2人でその友人のところに通い、お互い話し合う機会もなるべく持つようにしました。

そして、2度目の結婚記念日がやってこようとした頃、2人が下した決断は……?

日本に帰国して環境を変え、症状の改善をはかる、というものでした。
幸いご主人は知人のツテで、日本で語学の先生の職が見つかり、夫婦一緒に日本に移り住むことができるようになったのです。

日本に帰ってきたことで、まず引きこもりがなくなったそうです。A子さんは以前の明るさを取り戻し、自分の心の状態にも向き合えるようになりました。今後は数年かけて社会復帰を果たし、その後はまた向こうで暮らせるようになりたいと2人で話し合っているそうです。


A子さんのような状況に陥ってしまう人は、決して少なくありません。
ここまで深刻に事態が進んでいなくても、部分部分で共通点を感じている方は、かなりいらっしゃるのではないでしょうか?

A子さんご夫婦の場合、ご主人の仕事がフレキシブルで、数年日本に行く決断をしてくれたのが、とても幸いなことでした。しかし、現実には、このようにはいかないカップルのほうが圧倒的に多いと思います。環境を変えることができない場合、どのように対処していったらよいのでしょう?

記事「パートナーがうつ!? あなたはどうする?」では、そんな事例をご紹介しています。

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