おせちとは? おせち料理の意味を知って正月を楽しみましょう
お正月のおせち料理には、たくさんのいわれやしきたりがあります。そのどれもが家族の幸福を願うものばかり! 知恵と愛情を詰め込んで、おせちを美味しくいただきましょう。<目次>
おせちの由来・意味、いわれ
そもそも、なぜ「おせち」というのでしょう?「おせち」は御節料理のことですが、これは、季節の変わり目(=節)の大切な日(=節日)をお祝いする行事(=節供、節句、節会)のために、神様にお供えする料理(=節供料理)という意の「御節供(おせちく)」を略したものです。
神様にお供えしたものを分かちあうことで結びつきを深め、供に祝い、その恩恵にあずかるという意味があります。
本来はお正月だけのものではありませんでしたが、年に何度もある節日の中で正月が最も重要だったため、おせちといえば正月料理をさすようになりました。
おせちの歴史
おせちのルーツは平安時代の宮中行事で、元日や五節供(五節句のこと)などの節日に節供料理をふるまう習わしがありました。当時の庶民には縁遠いものでしたが、江戸時代に一般大衆に広がり、やがて一番目の節日であり最も重要な正月の料理を意味するようになりました。
お正月は、五穀豊穣を司る年神様をお迎えし、新年の幸福を授けていただく行事なので、収穫物の報告や感謝の意をこめ、本来はその土地でとれたものを用いますが、暮らしや食文化が豊かになるに従って山海の幸を盛り込んだご馳走となり、現在のおせちの原型ができました(詳しくは「そうだったのか!正月行事の由来と過ごし方 」もご覧ください)。
また、おせちに保存の効く料理が多いのは、お迎えした年神様が静養できるよう台所で騒がしくしないため、かまどの神様に休んでいただくため、神聖な火を使うのを慎むため、多忙な女性が少しでも休めるように、などといわれています。
おせちを重箱に詰める意味としきたり
おせちは年神様への供物であり、家族の繁栄を願う家庭料理でもあるため、縁起のよいいわれやしきたりがたくさんあります。そのひとつが重箱に詰めることですが、なぜ重箱に詰めるのでしょう?- 昔は正月の節供料理を「蓬莱(ほうらい)」「喰積(くいつみ)」と呼び、供えるものと実際に食べるものは別でしたが、やがてこれらを重詰めにするようになりました
- 「福を重ねる」「めでたさが重なる」という意味があります
- 年賀に来るお客様にも振る舞いやすい
- 保存しやすい
また、重箱の詰め方にもしきたりがあります。
- 正式には五段重だったといわれています。一段目から四段目までは料理を入れ、五段目は年神様から授かった福を詰める場所として空っぽにしておいたとか。現在は多くても四段ですが、「四」は縁起が悪いので、「与」と書くようになりました。
- 各段ごとに詰める内容が異なり、それぞれの料理に家族の幸福を願う気持ちが込められています。
- 各段の料理の種類や個数は、1・3・5・7・9などの吉数(奇数)で詰めると縁起が良いとされています。
おせちの詰め方と料理のいわれ・意味
正式な重詰めの内容※と、主な料理や材料のいわれをご紹介します。近年は一段から三段が主流となりましたが、基本を踏まえておけば賢く対応できるので、参考にしてくださいね。※地域や時代などで異なる場合があります。
おせち:一の重
■口取り・祝い肴一の重は一番上の段で、正月にふさわしい祝い肴を詰めます。そのなかでも、数の子・田作り・黒豆(★)を「三種肴(さんしゅこう)」「三つ肴」といい、欠かせないものとされています。関西では、黒豆または田作りをたたきごぼう(☆)とします。
- 数の子……子宝に恵まれ、子孫繁栄。ニシンの子なので「二親の子」となり、「二親健在」にも通じる
- 田作り(ごまめ)……イワシが畑の肥料だったことから「田作り」「五万米」と呼ばれ、豊作祈願
- 黒豆……まめに(勤勉に)働き、まめに(丈夫で元気に)暮らせるように
- たたきごぼう……ごぼうのように根を深く張り代々続く。たたいて身を開き開運を願う
- 紅白かまぼこ……半円形は日の出(年神様)。紅白でめでたく、魔除けの紅と清浄の白。
- 伊達巻き……華やかな意の「伊達」。巻き物が書物や掛軸に通じることから知識や文化の発達を願う
- 昆布巻……「喜ぶ」「養老昆布」にかけて。「子生」と書き子孫繁栄という意味も
- 栗きんとん……栗は「勝ち栗」と呼ばれる縁起もの。「金団」と書き、黄金色で縁起がよく蓄財につながる
- ちょろぎ……「長老喜」「千世呂木」と書き、長寿を願う
おせち:二の重
■焼物縁起のいい海の幸が中心です。
- ぶり……出世魚のぶりで立身出世を願う
- 鯛……「めでたい」にかけて
- 海老……腰が曲がるまで長生きできるように
おせち:三の重
■煮物山の幸を中心に、家族が仲良く結ばれるよう煮しめます。
- れんこん……穴があいていることから、将来の見通しがきくように
- 里芋……子芋がたくさんつくことから、子孫繁栄
- 八つ頭……頭となって出世をするように、子芋がたくさんつくので子孫繁栄
- くわい……大きな芽が出て「めでたい」、子球がたくさんつくので子孫繁栄
- ごぼう……根を深く張り代々続く
おせち:与の重
■酢の物・和えもの生野菜をバランスよく、日持ちのする酢の物で。
※忌み数字の「四」は使わず、「与の重」とします。
- 紅白なます……紅白でめでたく、祝いの水引にも通じる。根菜のように根を張るように
- 菊花かぶ……菊は邪気を祓いと不老長寿の象徴
おせち:五の重
■控えの重年神様から授かった福を詰める場所として空っぽにしておくか、家族の好物や予備の料理などを入れます。
こうしておせちを準備したら、必ず祝い箸でいただきましょう。
おせちを食べる祝い箸の由来・意味
おせちをいただくときは、慶事用の「祝い箸」を使います。祝い箸は末広がりの八寸(約24センチ)で縁起が良く、「両口箸」「柳箸(家内喜箸)」「俵箸」とも呼ばれています。その呼び名から、なぜおせちに相応しいのかがわかりますよ。■両口箸
両方の先端が細くなっていますが、一方は神様用、もう一方を人が使う“神人共食”を意味しています。おせちには年神様へのお供えものを分かちあっていただくことで、新年を祝い幸せを授かる意味があるので、両口が使える箸で年神様と食事を共にするわけです。
■柳箸
お祝いの席で折れたりするのを忌み嫌うため、丈夫で折れにくい柳の木が使われています。縁起良く「家内喜」と書くこともあります。
■俵箸
中ほどが太めにできているのは、五穀豊穣を願い米俵を模しているからです。また、「はらみ箸」と呼んで子孫繁栄を表したり、「太箸(たいばし)」と呼ばれることもあります。
祝い箸の使い方
お正月の祝い箸は、大晦日に家長が家族の名前をそれぞれの箸袋に記入し、箸を入れて神棚などに供えておくのが習わしです。その箸を元旦に用いたら、自分で清めて(洗って)、松の内(~7日)は同じ箸を使います。いずれも手軽なことなので、できることから取り入れてみてはいかがでしょう。箸袋に水引を結んだり、手作りしても楽しそうですね。
また、祝い箸は両方とも使えるようになっていますが、ひっくり返して取り箸にしたりするのはタブーです。(その理由は上記【両口箸】参照)
お正月の祝い膳は、重箱に詰めたおせちばかりでなく、おとそやお雑煮も含めて成立します。食べる順番やいただき方、由来なども押さえておいてくださいね。詳しくは「おとそ・お雑煮のいろは」をご覧ください。