乾杯の仕方、どうしていますか?
かしこまった席から日々の食事に至るまで、すっかりお馴染みの乾杯ですが、いつでもどこでも迷わずグラスを合わせる(ぶつける)ものだと勘違いしていませんか。乾杯の仕方はTPOによって違います。マナーを踏まえた上で、その場に応じて臨機応変に対処できたら素敵ですね。
グラスを合わせてはいけない場合……結婚式などのフォーマルシーン
まずは正式な乾杯マナーを覚えておきましょう。結婚式などの正式な席では全員が起立しますが、会食の席では座ったままで構いません。【正式な乾杯のしかた】
乾杯の唱和とともに、グラスを目の高さに上げて
→ 周囲の人と目礼を交わす
→ 一口飲む
→ 唱和した人に目礼する
→ 周囲の人に目礼する
→ 静かにグラスを置いて拍手する
このようにフォーマルシーンではグラスを合わせないのです。
乾杯マナー、その手で器を泣かさない
グラスを合わせないのは、繊細なグラスを傷つけないための配慮で、高級な酒器を使うお店やおもてなしの席にもあてはまります。例えば、どこのおうちにも来客用の器があるように、おもてなしの心は使う器にあらわれますが、それを無闇に扱えば、どんな気持ちになるでしょう。
器と器がぶつかる音を粋な表現で「器が泣いている」というのですが、その手で大切な器を泣かせてはいけません。泣かせてハラハラするよりも、軽く持ち上げ微笑んで、目と目を合わせたほうが素敵ですよね。こうした振舞いも大人のたしなみのひとつでしょう。
グラスを合わせても構わない場合……飲み会などのカジュアルシーン
フォーマルなシーンではグラスを合わせない(ぶつけない)のがマナーですが、いつもそうとは限りません。カジュアルなシーンでは、適度にグラスを合わせて構わないのです。ビアジョッキのように頑丈な酒器は、グラスをぶつけても大丈夫です。そもそも、なぜ乾杯のときにグラスをぶつけるのでしょう? その由来は諸説あり、古代ギリシャでグラスをぶつけて悪魔払いをしたから、中世ヨーロッパで毒殺を避けるためにグラスをぶつけて互いの酒を交ぜたから、などと言われています。
乾杯は現在、喜びや楽しさを表現したり親交を深めたりするために行うので、ぶつけても安心な酒器に限るのがおとなのマナー。悪魔も毒も心配ありませんから、力いっぱいぶつけたりせず、グラスを合わせる程度にとどめましょう。飲み会や打ち上げのように多くの人とグラスを合わせたい場合でも、こうした配慮は欠かせません。もちろん、上質な店ではグラスを合わせず乾杯したほうがスマートでしょう。
粋なおとなの乾杯のしかた
ここまで、乾杯の際グラスを合わせてはいけない場合と、合わせても構わない場合を説明しましたが、実はその中間もあります。それは、グラスを持つ指と指を合わせる(触れさせる)という方法。ただし、これはカップル向きで、大人数でするものではありません。また、カップルであっても気心の通じたパートナーでないと成立しませんから(変に誤解されます)、“粋なおとなのカップル向き”です。
例えば、陶磁器のマグカップで乾杯する場合、前述までのセオリーに従えば、軽く上げて微笑みながら互いにアイコンタクトをするでしょう。そこを一歩進んだおとなのふたりなら、カップを持つ互いの指をさりげなく触れさせるのです。お酒や酒器、場の雰囲気を読む必要があるため、この乾杯が絵になるかどうかはおふたりにかかっていますが、だからこそ、粋なおとなのしぐさに映ります。
乾杯は、コミュニケーションの大事なひとコマ。フォーマル、カジュアル、プライベートなシーンなど、その場にマッチしたやり方で気持ちを表してみてはいかがでしょうか。