「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句、いつ、どういう意味で使うの?
様々なシーンで交わされるお天気の話題に「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句がよく登場しますが、その言葉に深い意味が込められているのをご存知でしょうか。今回は「暑さ寒さも彼岸まで」を紐解き、意味や使い方、時期はいつなのかなどをご紹介します。「暑さ寒さも彼岸まで」の彼岸っていつ?
秋彼岸のころに咲く彼岸花。なぜかドキッとするわけは「彼岸花・曼珠沙華が妖しいワケ」から
【春彼岸】
春分の日が3月21日の場合 ※毎年同じ日付とは限りません
- 3月18日:彼岸入り
- 3月21日:彼岸の中日(=春分の日)
- 3月24日:彼岸明け
【秋彼岸】
秋分の日が9月23日の場合 ※毎年同じ日付とは限りません
- 9月20日:彼岸入り
- 9月23日:彼岸の中日(=秋分の日)
- 9月26日:彼岸明け
春の彼岸を「彼岸」「春彼岸」と呼ぶのに対し、秋の彼岸を「のちの彼岸」「秋彼岸」と呼びますが、いずれの彼岸もお墓参りに行く風習があります。
なぜ「暑さ寒さも彼岸まで」というの?
では、なぜ「暑さ寒さも彼岸まで」というのでしょう? 春分や秋分は二十四節気のひとつで、太陽が真東から昇って真西に沈み、昼と夜の長さがほぼ同じになります。秋は秋分の日(=彼岸の中日)を境に日が短くなっていき、秋の夜長に向かいます。つまり、太陽の出番がどんどん短くなるので、暑さも和らいでいくわけです。春はこの逆ですね。しかし、昼と夜の長さが同じだからといって、春分と秋分の気候が同じになるわけではありません。暑さの名残で秋分のほうが10度以上も気温が高いのですが、厳しい暑さや寒さも目処がつく頃なので、「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるようになり、慣用句として定着していきました。
「暑さ寒さも彼岸まで」の「彼岸」とお墓参りは関係あるの?
「暑さ寒さも彼岸まで」の彼岸にはお墓参りに行く風習がありますが、それはいったいなぜでしょう? 実は、春分と秋分の太陽に関係があります。仏教では、生死の海を渡って到達する悟りの世界を「彼岸」といい、その反対側の私達がいる世界を「此岸(しがん)」といいます。そして、彼岸は西に、此岸は東にあるとされており、太陽が真東から昇って真西に沈む秋分と春分は、彼岸と此岸がもっとも通じやすくなると考え、先祖供養をするようになりました。
迷い、悩み、煩悩に惑わされている人間が、悟りの世界と通じるときですから、暑さ寒さやそれに伴う様々なつらさも、彼岸のころには和らいで楽になると考え、励まされていたのでしょう。自然に寄り添う暮らしの中で、「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉の深さが身に沁みます。
「暑さ寒さも彼岸まで」の意味と使い方・使う時期・例文
それでは、「暑さ寒さも彼岸まで」の意味と使い方・使う時期・例文をまとめてみましょう。■意味
厳しい残暑や寒さも彼岸の頃には和らいで過ごしやすくなる、という意味。日本人の季節に対する感覚を表現しています。
■使い方・使う時期・例文
季節の移ろいの目安として、その時々の状況に合わせ<肯定><否定><期待や願望>などの使い方ができます。使う時期は、春彼岸の3月頃、秋彼岸の9月頃が多いです。
<肯定の意味>
- 今年は寒さが厳しくて大変でしたが、「暑さ寒さも彼岸まで」と言うように暖かくなってきましたね。
- 「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通り、残暑もおさまり涼しくなってまいりました。
<否定の意味>
- 「暑さ寒さも彼岸まで」と申しますが、今年はなかなか暖かくなりませんね。
- 昔から「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが、今年はまだ残暑が続きそうです。
<期待や願望の意味>
- 「暑さ寒さも彼岸まで」と言うように、もうじき楽になるから頑張りましょう。
昔と比べて気候が変化しており、従来の季節感とのずれを感じることも多くなりました。暑い寒いだけではなく、上記の通り「暑さ寒さも彼岸まで」の背景にも目を向けてみてはいかがでしょうか。