お雛様について意外と知らない!? ひな人形の由来・意味や飾る時期
雛人形の飾る時期はいつからいつまで?早く片付けないと嫁に行きおくれるって本当?
<雛人形 目次>
ひな人形の由来・意味
ひな人形には、大きく分けて2つのルーツがあります。■人形(ひとがた)による、身代り信仰 ひとつは、身代り信仰です。古代より、人形が人間の身代わりに厄を引き受けてくれると考えられてきました。この場合、「人形」と書いて「ひとがた」といいます。
ひな祭りのルーツである上巳の節句は、上巳の日(のちに3月3日となる)に厄を祓って幸せを願う行事。草、わら、紙などで作った人形に自分の穢れを移し、川や海に流して厄祓いをしていました。今でもみられる「流しびな」は、この名残です。また、木や布で作った人形を子どもの魔よけにする風習もあり、人の厄を祓うために人形が重要な役目を果たしてきました。
■人形(にんぎょう)による「ひいな遊び」 もうひとつは、ひな遊びです。平安時代に、貴族の子ども達の間で紙の人形でおままごとをする「雛遊び」(ひなあそび/ひいなあそび)が盛んになりました。「雛」とは大きなものを小さくする、小さくてかわいらしいものという意味で、「ひな」の古語が「ひいな」です。人形と身の回りの小物でおままごとをするのは、今も昔も変わらぬ人気の遊びですね。
やがてこれらが結びつき、人の厄を引き受ける男女一対の紙製立雛が誕生しました。これが、いわゆる「ひな人形」の原型です。やがて人形作りの技術が発展すると、ひな人形は立派になり、流すものから飾るものへと変化していきました。また、上流階級では嫁入り道具に豪華なひな人形を持たせるようになり、婚礼の様子や婚礼道具を模したものが好まれるようになりました。
その後、江戸幕府によって「上巳の節句(桃の節句)」が五節句のひとつとして女の子の節句に定められると、財力のある商人達は競い合うように絢爛豪華なひな人形を誂えるようになり、立派なひな人形をひな壇に飾るようになりました。
自慢のひな人形を見せ合う「ひな合わせ」や、ご馳走を持って親戚を訪ねる「ひなの使い」、おひなさまに春の景色を見せてあげる「ひなの国見せ」なども流行したそうです。そして美しいひな人形とともに「ひな祭り」をすることが人々の憧れとなり、町をあげて祝うようになりました。ついには等身大のひな人形まで登場し、贅沢を警戒する幕府によって人形の大きさがおよそ24cmに制限されたほどでした。また、地方によっては土や紙で作った「土人形」や「押絵人形」などを飾るようになりました。
こうして、女の子が生まれると、その娘にひな人形を用意して初節句を祝うようになり、不幸はその娘の身代わりとなって人形に受けてもらい、健やかな成長と幸せな人生を願うようになったのです。
お雛様って誰? 雛人形の登場人物、女雛・男雛や三人官女、五人囃子とは
ひな人形は宮中の様子を表しており、主に婚礼を意味しています。地域やメーカーによって多少の違いはありますが、ここでは一般的な登場人物をご紹介します。上から1段目:内裏びな/2:三人官女/3:五人囃子/4:随身/5:仕丁/6と7:調度品や御所車など |
ちなみに、おひな様とはひな人形のことをいい、女びなのみを指すのではありません。本来、男びなのみを「お内裏様」、女びなのみを「おひな様」と呼ぶのは間違いですが、童謡の歌詞の影響などで、そのような誤解が浸透しました。
また、日本古来の並べ方は、左上位の考え方により向かって右に男びな、左に女びな(人形側から見ると、左上位で左に男びな)でしたが、大正天皇や昭和天皇が国際マナーにそくして右上位に並んでいるのを見習い、昭和初期に関東の人形業界が、向かって左に男びな、右に女びなを並べるようになりました。今でも伝統を重んじる京都などでは、日本古来の並べ方をすることが多いです(詳しくは「雛人形の並べ方と男女関係…右の女は強い?」をご覧ください)。
女官長は既婚なので眉がありません。 |
向かって左の女官は、お酒の入った「加えの銚子」を持ち、口を開いています。向かって右の女官は、お酒を注ぐ「長柄の銚子」を持ち、口は閉じています。
お囃子の演奏をする人たち。向かって左から太鼓(たいこ)、大鼓(おおつづみ/おおかわ)、小鼓(こつづみ)、笛(ふえ)、謡(うたい)。それぞれの表情も違います。なお、雅楽を奏する「五楽人」の場合もあります。
お内裏様を警護する人たち。向かって左の若者が俗にいう右大臣、右の髭をはやした老人が俗にいう左大臣で、弓矢を持っています。
宮中で雑用をする人たち。怒りじょうご、泣きじょうご、笑いじょうごの3人なので、三人上戸(さんにんじょうご)ともいい、台笠(だいがさ。帽子をかけます)、沓台(くつだい。靴をのせます)、立傘(たちがさ)を持ち、出掛けるときの様子をあらわしています。ほうき、ちりとり、熊手を持っている場合は、宮中を掃除する様子をあらわしています。
よく見ると、怒りじょうご・泣きじょうご・笑いじょうごで「三人上戸」。 |
こうした人形の他に、嫁入り道具や、京都御所に植えられている桜(「左近の桜」と呼ばれ、向かって右に置く)と橘(「右近の橘」と呼ばれ、向かって左に置く)などを飾ります。
ひな人形を飾る日・飾る時期 ~いつからいつまで
ひな祭りは春を寿ぐ意味もあるので二十四節気の「立春」(暦の上で春が始まる日、2月4日頃)を迎えたら飾りはじめてもよいと言われています。また、ひな祭りは水に関係する行事なので、二十四節気の「雨水」(2月18日頃)に飾りはじめると良縁に恵まれるという言い伝えもあります。いずれも、その節気に入る日や吉日を選ぶことが多いです。そして、ひな祭りがすんだらすぐに片付けると良いとされています。なるべく早くしまうのは、「ひな人形を早くしまわないと、嫁に行きおくれる」という言い伝えによるものですが、そこにはこんな親心がありました。
■厄祓いをして不幸を遠ざけるため
ひな人形には、我が子の厄や災いを引き受ける役目があります。そこで、厄を移したひな人形をいつまでも身近に置いておくと幸せな結婚もできないと考え、早く片付けて災いを遠ざけたほうが良いとされました。
■きちんとした娘にしつけたいから
美しいひな人形はいつまでも眺めていたいもの。また、いざ片付けるとなると面倒です。しかし、いつまでも飾っておくと梅雨も近づきカビの心配もあるでしょう。そこで、片付けも満足にできないようではきちんとした女性になれず、いいお嫁さんにもなれないと考え、早く片付けるようしつけました。
■早く幸せになってほしいから
婚礼の様子を模したひな人形は、娘の結婚になぞらえることができます。早く飾り出すと「早く嫁に出す」、早くしまうほど「早く片付く(嫁に行く)」ととらえ、早くおひなさまのような幸せな結婚ができるよう願いました。
ひな人形を早くしまえないときはどうすればいい?
このような意を汲んで早めに片付けるようになりましたが、時間がないときや湿気が多い雨の日は、片付けには向きません。そんなときは、内裏びなを後ろ向きに飾り、「お帰りになった」「眠っていらっしゃる」と解釈する方法もあります。もちろん、気にしないで飾っておいても構いませんが、春を寿ぐという意味では、3月中旬、遅くとも「春分」(3月21日ごろ)までにはしまいましょう。また、ひな祭りを旧暦で祝う地方や、旧暦の3月3日まで飾っておく地方もあります。
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