和菓子/羊羹・最中・甘納豆

芝神明榮太樓「江の嶋」夏にも食べたい最中

夏場には水羊羹などに押されがちな最中ですが、「芝神明榮太樓」の「江の嶋」は別。貝殻の形が涼しさを演出し、手頃な小ささはもっと食べたいと思わせる。5種類の貝形の最中の美味しさは、丁寧な仕事の賜物です。

原 亜樹子

原 亜樹子

和菓子 ガイド

米国高校へ留学。高校卒業後は東京外国語大学へ進学し、食をテーマに文化人類学を学ぶ。国家公務員として特許庁で勤めた後、菓子文化研究家へ転身。アメリカの食に関する著書多数。 和菓子への造詣も深く、和菓子取材歴は15年以上。

暑い夏には冷たい水羊羹などに押されがちな最中ですが、「芝神明榮太樓」の「江の嶋」は別。貝殻の形が涼しさを演出し、手頃な小ささはもっと食べたいと思わせる。5種類の貝形の最中の美味しさは、丁寧な仕事の賜物です。

(目次)
P1 「芝神明榮太樓」
P2 土地にちなんだお菓子2種類

芝大神宮近くの「芝神明榮太樓」

芝神明榮太樓
2007年の夏に改装し、
すっきりとした印象に
増上寺近くに店を構える「芝神明榮太樓」。東京・日本橋の榮太樓總本鋪からののれん分けで、明治18年から続く老舗です。

看板
かつての三田支店の看板
「三田」の文字をカットして
店内に飾っている
戦前は三田と浅草にも支店があったそうですが、現在はここのみ。4代目の現ご主人、内田吉彦さんを中心に極々少人数で菓子作りをしています。

江の嶋
文士尾崎紅葉が名付け親
「江の嶋」
同名の箏曲に由来
明治35年に考案されて以来の看板商品が最中「江の嶋」。1口大の5種類の貝殻形の最中には、それぞれ異なる自家製の餡が詰められています。
あわびには粒あん、赤貝にはごま餡、ほたてにはこし餡、はまぐりにはゆず餡、牡蛎には白あん。どの餡も滑らかでくどさのない仕上がりです。

江の嶋
個包装を始めたのは現ご主人。
保存性も高まった。
しっかりと焼かれた香ばしい最中皮は、甘い餡と絶妙のバランス。出来立ては皮の香ばしさが、数日経つと皮と餡との一体感が楽しめます。『金色夜叉』などで知られる尾崎紅葉が名付け親というエピソードが最中の美味しさを一層引き立てるようです。

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