桃の節句とも呼ばれる雛祭り。古来より桃は邪気を払う、百々(もも)に通じるなど、縁起のよい植物として大切にされてきました。「桃の花を浸した酒を3月3日に飲めば百病を除くという(参考『広辞苑』)」ともあるように、桃は雛祭りには欠かせません。今回は、創業約480年の「とらや」から、桃にちなんだ和菓子を始め、老舗らしい雛祭りのお菓子をご紹介します。
とらやの雛井籠(ひなせいろう)
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「雛井籠(ひなせいろう)」
重箱入りの一口大の雛菓子 |
紙製の「雛井籠(ひなせいろう)」は、とらやに伝わる1776年製作の雛祭り用の重箱、雛井籠を元にデザインされたものです。かつて御用先などへお菓子を納める際には、井籠と呼ばれるお重に詰めて納めていました。このお菓子はその当時を偲ばせるものです。
重厚感のあるお重ですが、中には愛らしい和菓子が並んでいます。
「仙寿(せんじゅ)」と「桃の里」
![仙寿と桃の里]() |
| 左は「桃の里」、右は「仙寿」 |
雛井籠(ひなせいろう)には、子どもの口にぴったりの小さな上生菓子が1段に9個ずつ納められています。1段~5段まで好きな段数で購入できるので、少人数での雛祭りにも向いています。
写真右は煉切で桃の形をかたどった「仙寿(せんじゅ)」。左は白餡を求肥で包み、カリカリとした砂糖を飾った「桃の里」。中国の仙女、西王母(せいおうぼ)が、3千年に一度実ると言われている仙桃を、長生を願う漢の武帝に与えた(参考『広辞苑』)、という故事からも、桃は長寿をもたらすと考えられていたことが伺えます。桃のお菓子には、子の健やかな成長への願いが込められているのですね。