そば/東京のそば屋

池之端で6代にわたって営む名店 上野・蓮玉庵訪問記

さすがに文人墨客に愛された名店である。街がどんなに変貌をとげていっても、粋な暖簾をぶらさげ、いつも同じ表情で街角に佇んでいる。

執筆者:井上 明

神田、並木、そして池之端へ

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▲あまりにも美しい、詩的情趣に満ちた薄暮の不忍池
強烈な冬型の気圧配置に見舞われたその日、私はコートの襟を立てて、不忍池のほとりに佇んでいた。つるべ落としの太陽が、方角でいえば東京大学のキャンパスのほうに隠れる直前、弁天堂をピンポイントで狙う絶妙なライティングで、このページェントのたった一人の観客である私を愉しませていた。
今日、何故、私はここに居るのか。そう、賢明かつ聡明な読者であればすでにお察しがつくように、神田、浅草並木とくれば、次はここ、池之端に決まっているではありませんか。
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▲気さくな、街である。心も軽く、今宵の至福に向かって歩を進めた。
仲町商店街、入り口あたりにはエッチなお店が集まっていて、ちょっと入りずらい向きもあるかもしれない。そうしたお店にご用がない場合は、私のように中央通り方向から水上音楽堂前の信号機をめざし、そこを左折するとよろしい。
むふふふ、なにしろあと数歩で、そう「池之端」のあの店に辿りつく。この状況で、心が軽くないはずが、ない。
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▲ぬわんという出来事! がーーん。
その店は、期待に応えて、いつものように温かく私を迎え入れてくれる、はず、、、、であった。ところが、え、シャッターは冷たく閉ざされたままだ。そして行燈の下になにやら貼り紙がある。どれどれ。
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▲そ、そんなぁぁぁぁぁ
近寄ってみたそのビラの内容。あまりのことに呆然。

「ばかや…」と言い掛けた瞬間、いま私は上野の仲町にいることを思い出した。
なんだ、そうだったのか、わっはっはっは。問題ないじゃん、あの店があるわけだし。と、急速に気を取り直した厳冬の午後5時半なのであった。
あの店とは、そうこちらも皆様ご存じの、、、

というわけで、おもむろに、私はきびすを返した。水上音楽堂の交叉点には戻らずに、エッチなお店がたくさん集まっている方角へ、だらしない笑みをうかべて戻っていったのである。いひひひ。

さて、ご一緒にいかがです(次へ)
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