京都グルメ/京都のフレンチ

KEZAKO(ケザコ) (京都・祇園)(2ページ目)

野菜にこだわりを持ち、ひたむきな姿勢で料理に向かう一方、お客さんとジョークを交えながらのやり取りも愉快な京都の「KEZAKO(けざこ)」。腕をふるうのは、南仏出身のステファン・パンテル氏。

執筆者:渡部 功平

京になじむ、細やかな料理

・アスパラのスープに、クルミのローストとクリーム、ハモン・セラーノを浮かべて
シェフの料理ショーはまだまだこれから! 和を感じる美しさにまだまだ陶酔していたい
シェフの料理ショーはまだまだこれから! 和を感じる美しさにまだまだ陶酔していたい
出てきたのは、黒塗りの石板に乗せられ、まるでお茶漬けのようなスープボウル。もちろん、コースは始まったばかりですので、“ぶぶ漬け”が出てくる訳がありません。中身はアスパラのスープ。開ける前にシェフに「中身は何ですか?」と尋ねると、「何モ入ッテマセーン!」とジョーク。ふたの上に置かれているスプーンには、生ハムとクルミのクリーム、クルミのロースト。シェフが目の前で塊からハムを切り出す作業を眺めつつ、どんな料理になるのかを待ちわびるのがカウンターの楽しさ。

ちょっとした実験をしているような気分で童心に返ってしまいます
ちょっとした実験をしているような気分で童心に返ってしまいます
ふたを取り、シェフの丁寧な説明どおりにスプーンで生ハムとクリームをスープの中へ。少しかき混ぜるとクリームが溶け、いい感じのなめらかさに。食感のアクセントにもなっているプリッとしたアスパラの刻みとともにいただきます。塩気を少なめにして泡立てられた軽めのスープは、生ハムと共に口の中へ運ぶことで塩気が足され、完成された料理となります。ローストしたクルミのカリッとした噛みごたえも香ばしく、同じく木の実が大好きな豚と好相性。

・ホタテの殻包み焼き、季節の野菜とトリュフとベーコン風味のソース
その大きさにも驚く、殻付きホタテ
その大きさにも驚く、殻付きホタテ
こちらも大きな殻がパイ生地で閉じられていて、何が出てくるのかわかりません。横にはナイフが1本刺さっています(写真奥)。料理の視覚的演出として、シェフがふたを閉じるというビックリ箱的な要素を好むというのもあると思います。しかし、それ以上に大事にされているのが「香り」。こちらの料理も「少し開けにくいかもしれませんが、ぜひ自分で開けて欲しい。その方が香りをより楽しめますから」というシェフ。さっきのようなおどけた表情を見せたかと思うと、料理に対しては本当に真面目。この料理も香りを大切にするがゆえのシークレットボックスなのですね。

山海の香りを詰め込んだ宝箱
山海の香りを詰め込んだ宝箱
さて、差し込まれたナイフをひねって開けると、強烈な山の香り。そう、トリュフです。訪問した3月中旬は、今季最後のトリュフ。秋までしばしの別れを惜しみつつ、嗅覚に神経を集中させていると、次に海の香りが感じられます。まるで鼻でも旨みが伝わってくるような、ホタテの香りです。これにさまざまな野菜(紫大根、紫蕪、紅菜苔、芽キャベツ、ブロッコリー、菜の花)を添えています。紫がかったベーコンのソースには、見た目からの期待どおり、野菜の旨みも溶け出してとても美味。

次ページでは食材の合わせ方がユニークな、メイン料理とデザートをご紹介。
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