最先端を行くフランス料理
先に記事にしたが、筆者はワインスクールで『美食の技法』という講義を担当している。といってもワインスクールでワインを解説するのではなく、レストランに集合して食事を通して「レストランでおいしいものをおいしく食べるにはどうしたらいいか?」について話すというクラスである。
ワインスクールでは授業後のワイン会が一般的だが、最初からレストランでの講義となれば教室から店に移動する面倒もない。第1回の古典的料理から第2回の軽い料理を経て、全3回の最終回には「現代の料理」をテーマに会場のフランス料理店『オレキス』の料理を多皿構成のコースで味わう。しかも今回は参加者のご厚意でワイン提供を受け、カリフォルニア屈指のレアものワインを組み込むこととなったのだった。
まず、3種類を同時に提供するアミューズ・ブーシュ(一口のお楽しみ)。写真左から『レモングラスと抹茶のソルティーアイス』『人参のムース クンババス風味のヨーグルトソース』『ジビエのパテ トリュフ風味』だ。「クンババス」とはコブミカン(柑橘類の一種。東南アジアで葉や小粒な実を料理に使う)のことで、フランス語ではcumbaba、combava、combawaなどと呼ばれるそうだ。レモングラスやコブミカンそしてトリュフと、清涼感から冬の名残の季節感につながる香りのインパクトが食欲をかき立てる。
食事の始まりに合わせたワインは、エドモン・シュールランが造るシャンパーニュでノンヴィンテージの『カルト・ノワール』。自然な栽培を実践する平均樹齢25年の畑でピノ・ノワールを主に栽培する。ブドウは木製の垂直型圧搾機で搾汁し、ステンレスタンクで発酵・熟成。10から12の異なる区画ごとに醸造しすべてマロラクティック発酵させる(乳酸菌の働きでリンゴ酸を乳酸に変換させる)もの。品種配合はピノ・ノワール70%、シャルドネ30%で、ピノによる適度なコクの後にシャルドネのキレが感じられ、おつまみの余韻を際立ててくれる。