ワイン/ワインバー・レストラン

美食の技法:フランス料理を考える(4ページ目)

おいしいフランス料理を食べたいというグルメが集まる講座の最終回に、このレアものワインが登場! あのフランス料理店で、現代最先端の料理と最高峰のワインとを一度に体験した。

執筆者:橋本 伸彦

あの舌平目が現代風に蘇る


魚料理は『舌平目のアルベール風“モデルニテ”』。舌平目のアルベール風はマキシム・ド・パリのスペシャリテ(得意料理)で、同店で1930年代から30年以上に渡りメートル・ドテルを務めたアルベールAlbertにちなむ。彼は上客に限って手厚いサービスにつとめ、至らぬスタッフは容赦なく解雇するなどして、畏敬を集めるとともにマキシムのプレステージを高めたという。

「モデルニテ」とは「現代性」を意味し、マキシムのレシピを現代風にアレンジしている。ソースにヴェルモット、白ワイン、魚の出汁、仔牛の出汁を使用。魚の出汁を極端に減らして野菜の出し汁を加え、さらにつなぎのバターを減らすことで、軽やかになると同時に魚の香りが抑えられる。フランス産の舌平目の身の厚みや歯ごたえもしっかりとしており、身の上にふりかけるパン粉をアーモンド生地に置き換え、香ばしさを加えている。

『舌平目のアルベール風“モデルニテ”』

ヴェルモットはアロマタイズド(風味付けした)ワインの一種である。ここでは一般に「ノイリー酒」と呼ばれる銘柄のノイリー・プラットを使用している。オニアザミ、コリアンダー、ナツメグ、オレンジなど20種類のハーブを漬け込むため、複合的なスパイス香が加わる。添えられた紫色の葉をつまめば、ほろ苦さがよいアクセントになる。

ピノ・ノワール、マルカサン・ヴィンヤード AVAソノマ・コースト 1996年(マルカサン)
この料理には、前のワインと同じくマーカサンが造るピノ・ノワールの赤ワイン、単一畑マルカサン・ヴィンヤードの1996年を合わせる。先のシャルドネは買い入れブドウ、この赤は自社畑のブドウを使用するためラベルが違い、こちらはマルカサン(フランス語で「仔イノシシ」を意味する)が描かれている。かつては「魚には白、肉とチーズには赤」というのは鉄則だったものだが、しっかりめの魚料理に赤ワインを合わせるのが現代風というものだ。このワインはふくよかな果実味をたっぷりとたたえているのに、濃すぎず強すぎず、ちょうど好い加減に抑制の効いた味わいが見事だ。カリフォルニアのピノとは思えないような、素晴らしい熟成感を見せる。

『鶏のコンソメスープ』
魚と肉の間に口中をリフレッシュするための口直しは、『鶏のコンソメスープ』。山本シェフは口直しに一般的なシャーベットやグラニテ(ざらざらと粗めのシャーベット)は日本人には不自然で、それよりも汁ものが合っていると考える。このスープを漆塗りの器で提供するのはヨーロッパで人気の和風プレゼンテーションを意識してのことだろう。「フレンチで敢えて漆器」という意味合いを理解して、これはユニークな趣向だと思える客ばかりではないだろうから、なんとも大胆な提供方法である。

  • 前のページへ
  • 1
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます