煮込みというソース
「グアッゼット」とは中部イタリアでいう「煮込み」だそうだ。肉を使ったシチューのようなグアッゼットもあるが、エビやイカなどの魚介を指先ほどの粒々に刻んで、トマトやナスそしてヒヨコマメも入れ、魚介の旨味や脂がたっぷりした出汁でとろっと濃厚に仕上げたグアッゼットなら、いくぶんブイヤベースかラタトゥイユのような味に仕上がる。もうひとつ、揚げナスとモッツラレラチーズとトマトソースを重ね焼きにした料理で「パルミジャーナ・ディ・メランザーネ(ナスのパルミジャーナ)」というものがある。いわゆるパルメザンチーズ(パルミジャーノ・レッジャーノ)を使うわけではないのだが、この料理は各地で作られ「パルミジャーナ」と呼ばれる。
ふたつの料理を、イサキを介して一緒にしたのが今日の3皿目、『三重県産天然イサキと米茄子のパルミジャーナ風 魚介と夏野菜のグアッゼットと共に』だ。つまり、イサキとモツァレラチーズ、薄切りでグリルした米茄子を重ねてチーズが溶けるまで焼いたパルミジャーナ風の焼物を、スープ皿に浅く流したグアッゼットと共に供するのである。
『ポレンタパン』 |
合わせるパンはポレンタ(トウモロコシ粉を加熱しながら練って作る料理)のトウモロコシ粉が入った『ポレンタパン』。「この料理は、ポレンタを一緒に食べたら美味しそうだと思いまして……」と小川氏。なるほどプチプチとしたトウモロコシ粉の歯ごたえや香りが、イサキとは違った形で煮込みを際立てる。
この料理に合わせるのは、カンパーニャ州でグレコ種ブドウを使う「グレコ・デイ・トゥーフォ」というカテゴリー。ベニート・フェッラーラ社が造る「ヴィーニャ・チコーニャ」というワイン。グラスに映える色が、深い黄金色を帯びている! エキス分とアルコールがたっぷりとした堂々たる味わいなのだが、まるで塩味かと思うようなきっぱりしたドライなスタイルで、ほろ苦くブドウの香りがアロマティックに効いている。この料理に合わせるのは、しっかりした味がありながら余韻にかけてざっくりとリフレッシュしてくれるこんな味わいがいい。