ワイン/ワインバー・レストラン

イタリアの記憶を味わう:スペッキオ(4ページ目)

東京でイタリア料理を食べ、イタリアのワインを飲む――その時あなたは何を考えるだろうか? このレストランでは、いわば「イタリアの記憶」を皿に盛り込んでいるのだ……

執筆者:橋本 伸彦

煮込みというソース

「グアッゼット」とは中部イタリアでいう「煮込み」だそうだ。肉を使ったシチューのようなグアッゼットもあるが、エビやイカなどの魚介を指先ほどの粒々に刻んで、トマトやナスそしてヒヨコマメも入れ、魚介の旨味や脂がたっぷりした出汁でとろっと濃厚に仕上げたグアッゼットなら、いくぶんブイヤベースかラタトゥイユのような味に仕上がる。

もうひとつ、揚げナスとモッツラレラチーズとトマトソースを重ね焼きにした料理で「パルミジャーナ・ディ・メランザーネ(ナスのパルミジャーナ)」というものがある。いわゆるパルメザンチーズ(パルミジャーノ・レッジャーノ)を使うわけではないのだが、この料理は各地で作られ「パルミジャーナ」と呼ばれる。

『三重県産天然イサキと米茄子のパルミジャーナ風魚介と夏野菜のグアッゼットと共に』

ふたつの料理を、イサキを介して一緒にしたのが今日の3皿目、『三重県産天然イサキと米茄子のパルミジャーナ風 魚介と夏野菜のグアッゼットと共に』だ。つまり、イサキとモツァレラチーズ、薄切りでグリルした米茄子を重ねてチーズが溶けるまで焼いたパルミジャーナ風の焼物を、スープ皿に浅く流したグアッゼットと共に供するのである。

『ポレンタパン』
ややこしい説明だが、食べてみれば単純明快。肉汁たっぷりに焼いたデリケートな肉質のイサキを、モツァレラとナスがサポート。そのソースであると同時に付け合せとして、濃厚な煮込みを合わせるのである。つぶつぶした煮込みの具が、「味がよく染みた煮物」という感じに仕上がっている。イサキの淡い味と、煮込みの温かい凝縮感。両者のコントラストが楽しめる一皿である。

合わせるパンはポレンタ(トウモロコシ粉を加熱しながら練って作る料理)のトウモロコシ粉が入った『ポレンタパン』。「この料理は、ポレンタを一緒に食べたら美味しそうだと思いまして……」と小川氏。なるほどプチプチとしたトウモロコシ粉の歯ごたえや香りが、イサキとは違った形で煮込みを際立てる。

『グレコ デイ トゥーフォ ヴィーニャ チコーニャ 2006年』

この料理に合わせるのは、カンパーニャ州でグレコ種ブドウを使う「グレコ・デイ・トゥーフォ」というカテゴリー。ベニート・フェッラーラ社が造る「ヴィーニャ・チコーニャ」というワイン。グラスに映える色が、深い黄金色を帯びている! エキス分とアルコールがたっぷりとした堂々たる味わいなのだが、まるで塩味かと思うようなきっぱりしたドライなスタイルで、ほろ苦くブドウの香りがアロマティックに効いている。この料理に合わせるのは、しっかりした味がありながら余韻にかけてざっくりとリフレッシュしてくれるこんな味わいがいい。

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