ワイン/ワインバー・レストラン

最新フランス料理を究める:オレキス(3ページ目)

美味を皿の上に描き出すシェフとワインを熟知した名ソムリエがコンビを組んだ――この店に行って食事を楽しめば、あなたが知らない至福の世界が広がる!

執筆者:橋本 伸彦

フォアグラを配置する


ひとつの絵画のような前菜
前菜は2皿ある。最初の皿は『フォアグラのコンフィとピスタチオのブリオッシュ ディネット仕立て』。ディネットはフランス語で「ままごと」を意味する。ままごとのように食べるイメージ。山本シェフは「ぐちゃぐちゃに混ぜて食べて下さい」と言い切る。それも愉快そうだが、春藤氏は「いろいろ交互に食べてもらってもいいですから」と言い添えてくれた。

薄ピンク色にねっとりと仕上がった鴨のフォアグラが、セップ茸のチュイル(薄焼き生地)で挟まれている。赤ワインのジュレ(ゼリー)をリボンのように巻き、となりにイチジクとオレンジを煮詰めたマルムラード、手前側にはピスタチオ入りのブリオッシュそしてほろ苦い葉をフランボワーズのヴィネグレットで和えたサラダが配置されている。

『フォアグラのコンフィとピスタチオのブリオッシュ ディネット仕立て』

フォアグラと相性のいい素材が、惑星か何かのように連鎖的に配置されている。何か意味ありげなオブジェのようでもある。フォアグラと他のものを行ったり来たりするように食べてみると、組み合わせによってフォアグラの味わいが違って感じられる。だがブリオッシュとサラダだってなかなか合うし……これはもういっそのこと全部一緒に食べてみようかと思う。なるほど、何でもありの「ままごと」である。

2006年アルザス(マルセル・ダイス)
この料理にソムリエの春藤氏が合わせたのは、マルセル・ダイスが造る2006年のアルザスである。ひとつの品種だけで造るワインが多いこの地方にあって、ビオディナミ(シュタイナー式自然農法)で栽培したピノ・ブラン、リースリング、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・ノワール、ピノ・グリ、ミュスカ、シルヴァネールといったブドウ品種をブレンドし、柔らかな調和と深みを持つワインに仕上げている。

白い花や果実のフルーティーさと、ハチミツのような熟した風味がある一方で、かんきつ系のほろ苦さや酸味も充分。この風味が、口中で料理の甘味や脂に柔かく寄り添う。

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