本物が分かる大人の空間

ヨーロッパの3つ星レストランのサービスは、自然体なんですよ。でも笑顔や態度など、とっても温かく迎えてくれるんです」——ソムリエの春藤祐志氏は言う。彼は大阪全日空ホテル『ローズルーム』でサービスに開眼し、西麻布『ザ・ジョージアンクラブ』で12年間支配人兼ソムリエを務めた。

彼は休暇のたびに、洞爺湖やライオールの『ミシェル・ブラス』、スペインで一世風靡した『エル・ブリ』など、フランス料理以外も含めて世界最高レベルの店を訪れており、現在も毎年訪れ続けているという。

モダンな幾何学的デザインの店構え

食べ手として経験を積むにつれて彼は「自分が目指すサービスはゆっくりとおいしく食事を楽しんでもらうことで、高級レストランのかしこまったサービスではない」と気付く。そして料理人の山本聖司氏と共に、自分の味わいたい料理を自分の理想とするサービスで提供する、そんなレストラン『オレキス』を立ち上げる。

春藤氏の掲げる「本物が分かる大人の空間」というコンセプトによって、店構えと内装はシンプルでソリッドなデザインに仕上がった。いわゆる「グランメゾン」と呼ばれる店に見られるような、ありきたりな価値観の対極を行く店の誕生である。

濃い闇に浮かび上がるようなインテリアが料理を引き立てる

山本聖司シェフもユニークな経歴を持つ。彼は名古屋外語大在学中に独学で料理を始め、パリ大学留学中に知己を得て四谷のフランス料理店『スクレ・サレ』に入った。のちに銀座『レカン』で十時亨シェフのもとで働き、ザ・ジョージアンクラブに至るのである。彼は無口に見えるが、料理の話となると確固とした考えをきっちりと語る。

「フランスに行った、というだけでは限界がある。自分の感性で考えられるかどうかでしょう。私の方針は『味』重視。スペイン風の陳腐なコンセプトなどではなくて、フランス料理らしい美味しさがあること。そしてシンプルに見えても緻密な構成と、独創性に至るアプローチが料理に生かされていることです」 

シェフを評して、春藤氏が「フランス料理に関して『おたく』な私の話について来られるのは彼だけ」というのもむべなるかな。サービスに当たるソムリエ、そしてシェフの強力なコンビだ。さて、それでは春のある日のオレキスで、ランチコースを食してみよう。