大胆なほろ苦さとジビエの妙
よく切れそうなナイフが卓上にセットされて、いよいよ主菜の出番である。刻んでオリーヴオイルと炒めた蕗の薹(ふきのとう)をフランス産鴨の胸肉に塗りつけて焼き、ニンニクの薄切りを熱した油をかけたクレソンのサラダを添えた一皿。この料理もどちらかと言えば「正面からドンとやって来る」印象の盛り付けだ。鴨は蕗の薹にすっかり覆われており、青く苦味を含んだ風味が強く香る。またこれは、フキとクレソンというほろ苦さの競演でもある。そして食欲をそそるガーリックの香ばしい香りを添えることで、青臭さばかりの一皿ではなくバランスが取れた風味になっている。鴨は肉汁豊かな火の通しで、しっかりと弾力がある。蕗の薹をポロポロと落としながら、鴨と格闘し切り刻む。豪快に楽しむのが、いかにもアラジンらしい。
この大胆な料理に合わせるなら、獣の香りと山菜・野菜のほろ苦さに通じるワインか。シェフのおすすめは、フランスは南西部のマディラン地区で造られるワインの中でもモダンな『シャトー・モンテュス』2001年である。ブドウ品種は地元特産のタナに、カベルネ・ソーヴィニヨンを2割加えている。動物的な香りとほろ苦さの両方が瓶熟成で融け合い、さらにレーズン的な果実味やカベルネ種の上品さも加わっているワインだ。