ワイン/ワインバー・レストラン

精妙な味:エディション・コウジ シモムラ

軽く、あくまで軽く。そして美味しく。フランス料理を変えたベルナール・ロワゾーの精神を継承する下村浩司シェフが創造する独自の料理世界を、ワインと合わせてみた。

執筆者:橋本 伸彦

『水の料理』を超えて

地下鉄・六本木一丁目駅から地下通路で大通りをくぐり抜けると、ガラスから明るい陽射しが射すオフィスビル『六本木ティーキューブ』に出る。その1階にフランス料理店『エディション・コウジ シモムラ』がある。

オーナーシェフの下村浩司氏は、1967年3月30日生まれ。大阪・辻調理師専門学校を卒業後、東京のフランス料理店を経て1990年に22歳で渡仏し、以降8年間で『グアルティエロ・マルケージ』『ギィ・サボワ』『トロワグロ』『ラ・コート・ドール』といったイタリア、フランスなどのミシュラン星つきレストランで働いた。

1997年に帰国した下村氏は、今はなき名店『ザ・ジョージアン・クラブ』の副料理長を経て、2001年から乃木坂『レストランFEU』の料理長を務めた。そして2007年に独立して「エディション・コウジ・シモムラ」をオープン。翌年末に出版されたレストランガイド『ミシュラン東京版2009』では、初掲載で2つ星を獲得している。

明るいオフィスビルから非日常に誘うエントランス

下村シェフが師と仰ぐのは、ブルゴーニュの3つ星レストラン『ラ・コート・ドール』の故ベルナール・ロワゾー氏である。フランス料理で伝統的に行われる、酒を使ったデグラッセ(焼き汁の旨味を溶かし出す)に疑問を投げかけ、水によるデグラッセがもっと純粋に素材の味わいを引き出すとした『水の料理』を提唱した。また従来多用されていたバターとクリームが現代のフランス人には重過ぎると考え、替わりにニンジンやタマネギのピュレを使ってソースに濃度をつけるなど大胆な置き換えによって、本質的なフランス料理らしさを残しながら料理を全く新しい形に再構成していったのである。

素材のおいしさを最高に生かすために、既製の作り方でよしとするのではなくそれを超えた独自のスタイルまで到達する。こうしたやり方で下村氏はロワゾーの精神をしっかりと受け継いでいる。だが彼はロワゾーのスタイルをもとに、さらに一歩一歩、独自の世界を構築しているようだ。今回、下村シェフとコンビを組んで8年目というマネージャーソムリエの山田栄一氏に依頼して、ランチコースの料理に合うワインを薦めてもらった。

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