自分で注がない
高級店でのワインは「手酌なし」が原則。忙しい時間帯など空のグラスが見逃されることもあるが、気長に待とう。グラスに注がれるワインの量は店の方針とグラスの大きさにもよるが、容量の3分の1から4分の1程度である。ビールのようになみなみ注いでは、グラスにたちこめた香りを楽しむための空間がなくなってしまう。同席者に「お酌」させるなどもってのほか。サービスにワインを注いでもらう時に、グラスは卓上の定位置(着席者の右側)に置いたままにする。グラスに手を添える必要はないが、注いでくれた人には礼を言うのがマナーである。ワインを注いで欲しくない時はそう告げて断わり、出来ればグラスを下げてもらう。飲みながらワインのラベルを見たい時なども、ボトルはサービスに渡してもらうようにしたい。
いっぽうカジュアルな店では全員のグラスに目配りを欠かさないようなサービスは無理。サービスに注いでもらえる時は任せればいいし、客同士で勝手に注いでもいいはずだ。ただ、席を離れてテーブル間を出歩いて酌をするといった行動様式は内輪の宴会や個室では許されても、他の客と同じ空間を分かち合うレストランでは周囲にとって迷惑だ。カジュアルな場面でもワインを注ぐ時には同じテーブルの客同志で、グラスは卓上に置いて注ぐようにしたい。
皆が楽しめる飲み方を
レストランの格によって、利用する側の態度が萎縮したり居丈高になるのは見苦しい。自然体であっても店の雰囲気に合った服装・行動・注文などを駆使してその食事を最大限楽しめるように気を配るのが、レストラン客の上級者である。例えば紫煙や化粧品の香りは強過ぎるとワインの楽しみを台無しにしてしまうので、料理とワインの風味をとことん楽しむには禁煙と香水なしがことのほか嬉しいものだ。飲食店もビジネスとはいえ、金さえ払えばわがまま放題出来ると思うのは間違いである。関与する人々皆が快適な時間を過ごして「この人と一緒だとワインがおいしいね」「今日はちょっと得をしたな」と思わせるようなワインの注文と飲み方が出来れば、それが最高のマナーと心得よう。