ワイン/ワイン関連情報

歴史的事件の仕掛け人・スパリュア氏を追う(8ページ目)

『カリフォルニアワインがフランスワインに勝利』の判定……世界のワイン観を揺るがした『パリスの審判』主催のスティーヴン・スパリュア氏が来日して開催されたセミナーとディナー。ここで下された審判はいかに?

執筆者:橋本 伸彦

牛のチーズと羊のワイン

ムートン・ロトシルト1985年
最後のワインはフランスでもトップクラスの赤ワイン、ムートン・ロトシルトの1985年である。最高級のワインとヴィンテージ、熟成度が出合う瞬間である。ソフトにスムーズに口に入り、ちょっぴり獣のような熟成香と、深い深い味わいが余韻へとつながる。

このゴージャスなワインに、引き立て役としてシンプルなチーズをお供させる。クリーミーで柔らかなブリーと、硬質でナッツのような香りのあるコンテ。一切れずつで、充分満足だ。牛の乳で作ったチーズと「羊」を意味するムートン。この組み合わせは申し分ないものである。スパリュア氏が「あ……このワイン、お替りあるよね?」と訊いたのが何よりの証拠だ。

吉野建シェフが登場
この日の料理は、吉野建シェフ自らの采配で作られた。よく選ばれた素材が、注意深く調理され、過不足なくシンプルな一皿となる。ディレクター・ソムリエの若林英司氏が率いるサービスも、数十人分の料理を一気に提供する状況下で寸分の隙もなく有能であった。

「パリで日本人がミシュランの星を獲得する」という離れ業をやってのけた吉野氏。彼もカリフォルニアワインと同じように「パリ対決」に勝ったのである。優れたワインや料理が世に出るのは、我々にとって常に嬉しいことである。

ブラインドでワインを比較するということ

ディナーは夜半まで続いた
昼のセミナーからディナーまで、スティーヴン・スパリュア氏を追った。参加者は誰もが、パリ対決とスパリュア氏のことを心に刻み、そしてワインにはどんでん返しのドラマがあると学ぶ。

してみるとパリ対決、30年以上経った今なお、強い説得力を持って迫ってくる勝負である。偉いワインだから旨い、のではない。ワインを「目隠し」で比較することで、我々は逆に「開眼」するのである。

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