マダムと執事?
楠田さんは独力でワイナリーを開いたケースだが、次はブルゴーニュの銘醸ドメーヌ『シモン・ビーズ』当主と結婚してワイン生産者となったビーズ千砂さん。おや? さすがマダム、お付きの銀髪の執事が横に控えているではないか……と思いきや、この紳士は千砂さんと当主を引き合わせた『ゴトー酒店』店主の後藤和夫氏。アカデミー・デュ・ヴァン講師でもあり、セミナーの進行役であった。ビーズ千砂さんは、仕事でのパリ赴任中にワインに魅せられたという。1994年からアカデミー・デュ・ヴァンでワインを学び、1996年にパトリック・ビーズ氏と出会い、翌年からビーズ家に滞在しブルゴーニュ大学でワイン文化講座を受講。その翌年には氏と結婚し、現在は子育てのかたわらドメーヌの運営に携わっている。
言わば「母校」のアカデミー・デュ・ヴァンで夏のセミナーを行なうのは3回目である。会場に入るとすぐに、てきぱきとホワイトボードに板書を済ませる。今回のテーマは『酸とミネラル』。彼女はまず「ブルゴーニュワインの特徴は、酸とミネラルがきれいに出ていること」とする。そして「赤はフェノール(色素や渋味などの成分)の熟成を重視するので遅く摘むのに対して、白は遅摘みするとリッチになってしまうので糖度より酸を見て決定する」と対比させた。
また生産者らしく補酸(酸味が足りない場合に酸を加えて補う)と除酸(逆に酸を取り除く)の実際についても説明があった。ワインにはリンゴ酸などが含まれるが「補酸や除酸の工程で対象となるのは酒石酸で、補酸は量とタイミングの加減が難しい。必ず果汁の段階で加えるべき」と述べた。
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