ワイン/ワイン産地と生産者のレポート

「海外でワイン造り」の日本人が語る(6ページ目)

海外に出てワインを造る人は多いが、華やかなイメージの裏には驚くべきドラマがある。楠田浩之氏とビーズ千砂さんが語る、ワイン生産者の現実とは? ワインの香り成分研究の富永博士も登場。

執筆者:橋本 伸彦

ヴィンテージ毎の問題に対処する


ビーズ千砂さんは、年々の気候とブドウの生育の様子についても詳しく解説した。とりわけ2004年の雹による被害(雹によってブドウの葉や実が傷付いてしまう)は深刻だったようで、一時はワインが造れなくなるといった最悪の事態を覚悟したという。

■ 2007年
  4月に猛暑が訪れ、5月半ばにブドウが開花。
  開花から収穫まで通常100日前後なので、
  夏休みの旅行をキャンセルした人も。
  6月は冷夏と多雨。仕舞ってあったセーターを
  出して着なくてはならなかった程。
  7月14日の新月を境に気温が上がっている。

■ 2006年
  7月の猛暑、8月は冷夏、9月に多雨。非常に難しいヴィンテージ。
  とにかく選果をすることが必要。赤はチャーミングで、白には貴腐が入った。
  2005年が上出来で品不足となり2~3割ほど価格上昇。
 
■ 2005年
  酸の質がリッチになったが、良年。

■ 2004
  8月に雨と雹でブドウに被害が出た。
  9月に入って晴天続きとなり、風に乾かされて傷んだブドウが落果した。
  公示日より早く収穫したブドウは熟しておらず、青い風味のワインに。
  シモン・ビーズはリスクを負いつつ熟すのを待って9月末から収穫。

■ 2003年
  猛暑で糖度は上がったが、酸が不足したので補酸をした。
  化学肥料で収量を上げるのが流行した70~80年代に、畑に大量に撒かれた
  カリウムが土壌に蓄積されている畑はワインの酸が著しく低下した。

生産者は、毎日の天気を注視し、常にブドウ樹のコンディションに気を配りながらブドウを育て、ワインを醸造している。彼らにとって毎年の気候が現実そのものであり、我々消費者にとっての「ヴィンテージの良し悪し」よりずっと生々しい。このことが伝わってくる話であった。

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