お茶の漬物
乳酸発酵がこのお茶の特徴です
さて、その特徴は、同じ四国の碁石茶同様、中国雲南省の酸茶やミャンマーのラペソーなどにも通じる、いわゆるお茶の漬物とでも言うような製茶法にあります。
阿波番茶は、中村羊一郎先生の『番茶と日本人』」という本に、その作り方が紹介されていますが、それによると、夏の盛りの7月中旬、土用の暑い盛りに茶畑に入り、茶葉を一枚残らずしごきき取り、数日分ためたら、大釜でゆでて、床に広げて冷ました後、揉捻機で軽く揉んで、大きな桶に漬け込んで発酵させ、発酵したら筵(むしろ)に広げて天日干し、一日に3回ほどひっくりかえして、ようやく出きるのだそうです。
新芽を摘んで残りの茶葉を放置したものを摘むのではなく、年1回だけの晩茶づくりのために、完全に成長した一番茶のみを摘むのが他の番茶と違うところですね。
さらに、大きな釜でゆでて発酵を止めたあと、茶すり機で茶葉を擂るという作業をします。このあたりが、他の日本の黒茶と違う製茶工程と言えるでしょう。そのあと、桶に一ヶ月間以上、じっくりと漬け込み、乳酸発酵させ、独自の乳酸菌製法によりつくられます。まるで、茶の漬物、茶のヨーグルトのようですね。
非常に似た碁石茶が主に茶粥に使われていたのに対して、こちらの阿波番茶は、茶粥の風習もあるのですが、むしろ清飲、つまり、そのまま普通のお茶と同じように飲むお茶として発展してきたのだそうです。
そしてこのお茶の淹れ方としては、熱湯で淹れてしまうとなかなか抽出しないし、どうも酸っぱさや雑味が表にでてきてしまうので、普通の番茶同様、熱湯の中で数分間煎じて十分滲出て飲むのがお勧めです。
この阿波番茶が環境省によって「香り100選」(リストの71番に上勝の阿波番茶が選ばれています。)に選ばれているというのは、なんとも奇妙なことだとおもいます。日本人のDNAの根源に触れるような香りということなのでしょうか。
<関連リンク>
製茶工程・上勝阿波番茶(山田産業)