北陸のバタバタ茶の風習
バタバタ茶
日本の黒茶、その2回目は、場所を北陸に移し、富山の珍しい「バタバタ茶」を取り上げることにしましょう。
富山の珍しいお茶の風習である「バタバタ茶」は、近年はカタカナ標記されるのが一般的ですが、もともとは、ばたばたと茶せんを左右に振る動作を表現する言葉がお茶の名詞になったのだといわれています。
バタバタ茶というのは、いわゆる飲み方で、黒茶であるのは、その原料になる茶葉のこと。ここでは、まず、バタバタ茶の風習について見てみることにしましょう。
バタバタ茶の風習は、仏教の儀式の一つであるとされており、新潟県との県境に程近い富山県朝日町蛭谷(びるだん)の集落では、月命日やお講、結婚、出産など様々な集いの際に、「バタバタ茶」と呼ばれるお茶会が開催されてきました。
発祥は定かでは有りませんが、富山県黒部農業改良普及所の宇田秋子さんの説では、「真宗本願寺第8世蓮如上人が文明4年(1472年)新川郡清水に堂宇を構え説法す」との記録に出てくる講に伴う酒・飯・茶の一つとして、既にこの地で飲まれていたということのようです。
バタバタ茶は、朝日黒茶と呼ばれるお茶をわかし、「五郎八(ごろはち)」と呼ばれる茶碗に茶汁と塩を一つまみいれ、3年ものの「ちしまざさ」とよばれるすす竹で作られた長さ15センチの茶せんを2本組あわせた「夫婦(めおと)茶せん」で振り茶により点てられるお茶です。
黒茶は、木綿袋に入れて1時間程煮出して使われますが、まさに黒茶風味のお茶です。茶せんであわ立てることで、味わいがまろやかになる飲み易くなるのですが、さらに、茶せんを振り続けると大きい泡がだんだん細かく白くこんもりと盛り上がってきて、まるで沖縄のブクブク茶のようになります。
蛭谷の集落の講では、この泡を飲んで黒茶を味わうだけではなく、山菜の煮物や漬物等を食べながら、一服や二服にとどまらず、話の続く限り飲むという面白い風習です。おそらく、集落の和をもたらすものとして欠かせない行事だったのではないでしょうか。
この風習は新潟県糸魚川にもあるようで、現在、「バタバタ茶の会」がこの振り茶の風習を後世に伝えようと努力しています。
次にバタバタ茶の原料である「朝日黒茶」の製茶法などを見てみることにしましょう。