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茶書に見る茶と水の関係(2ページ目)

茶を淹れるときに、それにふさわしい水を使う。これは昔から行われてきたことです。過去の茶書を紐解いて、茶と水の関係について考えて見ましょう。

執筆者:平田 公一

優良な水源について


中国の天下第一泉:盧山康王谷水簾


すでに見たように、陸羽は「山の水がよく、次に川の水が中くらいで、井戸水は良くない」とその著作である『茶経』に書いています。

陸羽の『茶経』を含む歴代の茶書において取り上げられる水議論の内容としては、「水質鑑定」がとても重要視されています。

特に陸羽が水を取り上げた最初の茶人であったこともあり、張又新は『煎茶水記』という茶書の中で、陸羽の水質鑑定力が抜群であったことを褒め称えています。

また、彼は、茶にとって最も良い水を産する水源(茶泉)について触れ、陸羽は「楚の水が第一、晋の水が一番悪い」と述べたことを掲げています。

これをきっかけに、歴代の茶人は、どこの水が最も良いか(水源優劣論)という論争を行っており、陸羽が掲げたものとして、いまでも次の20が残されています。

  第一  盧山康王谷水簾(天下第一泉)
  第二  無錫県恵山寺石泉水
  第三  湖北蘭渓石下水
  第四  湖北扇子山下
  第五  蘇州虎丘寺石泉水
  第六  盧山招賢寺下方橋潭
  第七  揚子江南零水
  第八  洪州西山西東瀑布水
  第九  唐州柏岩県淮水源
  第十  安徽龍池山嶺水
  第十一 丹陽県観音寺水
  第十二 揚州大明寺水
  第十三 漢江金州上遊中零水
  第十四 湖北玉虚洞下香渓水
  第十五 陜西商県武関西洛水
  第十六 呉淞江水
  第十七 天台山西南峰千丈瀑布水
  第十八 林州元泉水
  第十九 桐盧厳陵灘水
  第二十 雪水


この天下第○泉というのには様々な主張があり、ここに掲げた陸羽の20泉のほかにも、「揚子江南零水」が天下第一だとか(劉伯芻『煮茶記』)、「北京玉泉」が第一だ(『冷盧雑識』)、いやいや「安寧碧玉泉」(楊慎:明代の学者)とかという論争は絶えなかったそうです。

また、唐代の詩人白居易は「融雪煎香茗(雪解け水で名茶を淹れる)」と歌っており、清代の乾隆帝は「平湖幾里風香荷、荷花葉上露珠多。 瓶甕収取供煮茗、山荘韻事真無過。」と、蓮の葉の上に付いた露を取って茶を淹れるというなんとも風流な歌を歌っています。

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