国内の中国茶専門店等の対応
中国茶専門店(輸入販売を行っている業者)も、様々な工夫を行っています。例えば、オンラインで茶葉を販売している「HOJO」では、「輸出するお茶が日本のポジティブリスト制に対応しており、万が一違反事例が生じた際には、製品の積み戻しを無償で行うという」誓約書を出させたそうです。検査費用を販売会社側が持ち検査も行うかわりに、誓約書を出さない会社との取引を打ち切るという、明確な姿勢を示したことで、安全性確保のための対応したわけです。
また、さらに、わが国で営業を行っている大手の輸入販売業者では、トレサビリティーの確保や輸入前の自主検査を行うことで、日本の消費者に安心してもらうための措置を様々に講じています。
ポジティブリスト制度が導入された当時は、たしかに、行ったい何をすればいいのかわからず、各社ともだいぶ混乱が見られました。しかし、しっかりとした検査を行っていれば、問題が無いことがわかり、日本の基準に合うような検査を独自に実施する会社も多くなりました。
しかしながら、問題はいくつかあります。
その一つが、中国や台湾の基準と日本の基準が違うこと。したがって、中国や台湾で検査して問題のないものについても、日本の検査で不合格となる場合があるわけです。
そこで、日本の基準にあった検査を日本国内の機関で行うことにより、安全確保に努めるべく、輸入後に一定のロットについて検査を行う前向きな業者もでてきています。その結果、多くの中国茶専門店のHPには、農薬問題への真摯な取り組みが丁寧に記載されていたりもします。
馨華が実施した日本国内での自主検査結果通知。
267種類の農薬検査を実施した。
もちろん、日本の基準にあった独自検査を行うこととすれば、日本の厚生労働省の登録検査機関において行うのが一番ということになるのですが、実は、日本における検査費用はEUに比べると数倍から数十倍もコストがかかるといわれています。
たとえば、登録検査機関の中でも権威のある財団法人日本食品分析センターでは、茶の場合277項目の薬品について検査する「一斉検査」がありますが、一種類のお茶について300gのサンプルを検査するのに約2~3週間かかる上、料金は25万円必要となります。
もちろん、中には比較的低コストかつ短い期間で検査をしてくれる株式会社環境研究センターのような機関もありますが、それでも茶対象200項目一斉分析では、茶一種類につき5万円が必要となります。たとえば、茶を20種類取り扱う中国茶専門店の場合、すべての品目について検査を行うと、それだけで環境研究センターの場合でも100万円(日本食品分析センターの場合は、なんと500万円)の検査コストがかかってしまうわけです。
これらの手間を掛けた分、コストは価格に跳ね返り、中国茶の価格が高騰するということもあるわけです。お茶に限らず、安全な輸入食品を消費者が購入できるように、こういう部分での国の取り組みも大いに必要ではないかと思います。
今まで見てきたように、様々な検査によって無農薬の中国茶、台湾茶が消費者の手に届く努力が行われているわけですが、多くのジレンマ、問題点もまだまだ解消されていません。そのような中にあって、わが国の中国茶専門店はいろいろな取組みを積極的に行い、自助努力を行っている点は高く評価したいものです。
消費者としては、より安全で美味しいお茶を存分に愉しみたいと思うわけですから、引き続き日ごろからの中国茶専門店の様々な試みを地道に続けて行って欲しいものですね。
<関連リンク>
久順茶行の取り組み
馨華の取り組み
清香花楼の取り組み
華泰茶荘の取り組み
<取材協力>
ティーズリンアン:堀田信幸 さん
久順茶行:安蒜美保さん
馨華:秦国力さん
日本華泰茶荘:林聖泰さん
<写真提供>
ラ・メランジェ:松宮美恵さん