紅茶の元祖は緑茶?!

英国でも人気の正山小種
紅茶の歴史を紐解くと、その元祖は中国にあると記されています。1560年頃、ポルトガル宣教師が初めて中国からヨーロッパに茶を飲む文化を伝えたといわれています。中国ではこの時代は明朝嘉靖年間でした。日本では今川軍に織田信長が奇襲をかけ勝利をおさめた桶狭間の戦いがあったころ。

この頃知られていたのは紅茶ではなく、実は緑茶でした。

約50年後、1610年にオランダ人商人が販売用に日本から茶を持ち帰ったことを契機に、ヨーロッパにお茶が輸出されるようになり、中国からも様々なお茶が輸出されるようになりました。

この時代中国から輸出されるお茶は、まだ緑茶であったといわれます。

1600年代後半から1700年代には、ヨーロッパで喫茶文化が花開きます。では、この時代、中国には紅茶はあったのでしょうか?

正露丸の匂いが特徴
一時代前までは、「中国から緑茶を運んでいく途中で、船に積んだ茶が厳しい日差しと湿気で発酵してしまい紅茶になったのです。それを飲んでみたらすごく美味しかったことから、ヨーロッパでは紅茶が一般的になったのです。」などという説がまことしやかにまかり通っていました。

もちろん、このような過酷な環境に茶葉を置くと、グリーンティーが劣化してブラックティーに変化するわけで、紅茶が英語でブラックティーといわれるようになった由来はこんなところにあるのかもしれません。しかし、緑茶はすでに発酵を止めてある製品。日差しと湿気を加えても劣化するだけで、発酵が進み紅茶になるわけではないことは、広く知られている話しですね。

中国で一番早く生まれた紅茶は、おそらく18世紀になってから。当時は緑茶がまだまだ主流。もちろん、緑茶からいきなり紅茶になったのではなく、その間になにか別のミッシングリンクがあったのではないかと考えるのが一般的です。

ミッシングリンクは烏龍茶?!

茶葉は黒っぽい
明代は1644年に滅び、清代に変わりますが、17世紀後半から18世紀にかけて康煕帝・雍正帝・乾隆帝というお茶好きでも有名な皇帝が統治した時代。そのため様々な銘茶が生まれています。この時代、烏龍茶も生まれました。

『グリーン・ティーとブラック・ティー』(矢沢利彦著)という本を紐解いてみると、19世紀中葉のイギリスの自然科学者ロバート・フォーチュンが、中国を二度にわたって訪問し、詳しく茶の状況をレポートしているのですが、彼の著作の中には、中国にはグリーン・ティーとブラック・ティーの二種類があったことが記述されています。

烏龍というお茶の区分はなく、烏龍の茶葉の色合いなどが緑茶と比較すると褐色、あるいは黒に近い色をしていたことから、緑茶以外のお茶をブラックティーと呼んでいたようです。

このお茶たちは、緑茶よりもヨーロッパの食生活にはあうということで、中国から次第に多く輸出されるようになって行ったようですが、当時、まだ現在の完全発酵させた紅茶は生まれていなかったというのが定説ではないかと思われます。

18世紀から19世紀にかけて、中国からイギリスへ「BOHEA」(ボヒー)というお茶が多く輸入されていました。

正山小種の焙煎を行なう「青楼」
このお茶についてはじめて触れられた書物は、18世紀後半に書かれたかかれたル・コントの『中国現状新誌』。「小さくて黒味がかっている葉は湯を黄色く染める」と書かれています。また、康煕帝から福建省の測地を命ぜられたレジスなどの宣教師から報告をまとめたデュ・アルドも『中華帝国全誌』に、「Vou y Tchaは福建省に産する。その名を建寧府に位置する有名な武夷山から取っている。」と書かれていました。

この「BOHEA」は福建省の武夷山辺りで作られる烏龍茶だといわれていますが、当時の記録ではこの茶が「ブラックティー」と呼ばれていました。

今の全発酵の紅茶(=ブラックティー)とは明らかに違う半発酵の烏龍茶(=ブラックティー)が、何をきっかけに全発酵のお茶になっていったのか、実はそのあたりの経緯が今ひとつ明確ではありません。

諸説ある中で、一つの説(注1)としては、ヨーロッパ人の好みに合わせ中国で烏龍茶の発酵を強くしていったのが紅茶の始まりというもの。その証として、武夷山周辺の星村桐木のお茶「正山小種」が掲げられています。


(注1)紅茶専門店リンアンの店主、堀田さんから「紅茶はインドでイギリス人自身が作り出した。」という説があることを教わりました。
 当時まだ中国では現在のような紅茶は作られていなく、インドアッサムでお茶が作られるようになったときに烏龍茶から紅茶に代わっていったというものだそうです。
 もちろん、このときも烏龍茶に似たブラックティーで、技術的に全発酵の紅茶が生まれたのは、1873年にウィリアムジャクソンが製茶機を発明し、充分な揉捻が出来るようになったことがきっかけだとのこと。